FoE Japan
シベリアタイガプロジェクト
シペリア トップ トピック 写真館
シベリアタイガプロジェクトトピック>エコツアー
ツアー体験記01
ツアー体験記02
とんでもなく(?)寒い!すごい!青い!リカービキン(ビキン川)の森と空
シベリアツアーに参加して [有田ゆり子}

シベリア...。「シベリア」という言葉から一体どんなイメージが浮かぶだろう?極寒、地の果て、タイガ(針葉樹林)...。地球の友がシベリアの森林保護をやっていると初めて知ったとき、とても意外な気がした覚えがある。森林保護なら熱帯雨林というのが当たり前だと思っていたから。その後シベリアの森林保護に関する本を読んだり、スタッフから話を聞いたりして、徐々にその必要性はわかったつもりだったけれど、なかなか具体的な「シベリアの森」のイメージをつかむことができなかった。そしていつしか、一度行ってみたい、実際に自分の目で確かめてみたい!と思うようになっていった。というわけでシベリアのツアーがあると聞いて、迷わず申し込んでいた。

待ちに待ったツアーの日がやってきた。集合は新潟空港。フィリピンのサンロケツアーで一緒だった菅野さん、山口さんも一緒なので、何かと心強い。参加者の年齢層は幅広ろかったが、どちらかというと20〜30代が多いようだった。ちょっとおんぼろ(?)のロシア製飛行機にびっくりしたけど、無事に昼過ぎに離陸して、わずか3時間ほどでハバロフスクに到着。改めて意外な近さに驚いたが、「近くて遠い国」という言葉がぴったりするのかもしれない。

一晩ホテルに泊まって、翌日午前中は郷土博物館を見学したり、アムール川を遊覧船で巡った。船から眺める空や川面は灰色で、雨模様のせいもあり、町並みもうら寂しく見える。これぞ「ロシア」なのかしら、などと感慨にふけっていると、たくさんの木材を積んだ船が視界に入ってきた。ハバロフスクの主な産業の一つが木材の流通であるとは聞いていたが、それが実感できる量である。丸太は合法的にタイガから切り出したものなのか、それとも非合法的な盗伐の産物なのか。それだけではわからならなかったが、シベリアの森の近くまで来ているんだなぁ、と感じた。しかし寒い船の甲板で食べた温かいピロシキは美味しかった!

午後からはバスでキヤ村に向かって出発した。郊外に行くにつれ、車窓から見える風景は変化した。池や湿地、まばらな森が徐々に多くなっていく。そして日が傾いた頃にキヤ村に到着。宿泊するペンションは白く塗った煉瓦に青い窓枠が瀟洒な建物だった。民族衣装に身を包んだペンションの女性と少年がアコーディオンの演奏と共に出迎えてくれて、歓迎ぶりにびっくり。パンと塩を食べさせるのが出迎えの習わしということで、みんなおもしろがりながらも口にした。夕食はロシア風水餃子やイクラに舌鼓を打ちながら、参加者同士で話が弾んだ。いろいろな職業の人がそれぞれ異なるきっかけで参加していることがおもしろい。一心地ついた頃、またもスタッフがアコーディオン演奏と歌を何曲も披露してくれて、音楽に合わせてダンスも楽しんだ。

夕食の楽しい一時の後はペンションの売りである本格的サウナを体験しようということで、離れのバーニャ(サウナ)に行った。これが大騒ぎで、女性は二つのグループに分かれて互い違いにサウナで蒸されたり、身体を洗ったりしたが、すべてペンションの主人の指揮の下で行うもので、まるで儀式のようだった(もちろんその人がいるところではタオル地の服を着ていたけど)。

翌日は野生動物保護センターを見学した。センターといってもぱっと見では普通の農家とかわらず、幾つかある檻やフェンスの囲いが辛うじて野生動物を保護していることを示していた。初めて見るアムールトラは大きく、優美だった。フェンスの囲いは20m四方ぐらいだったが、大きなトラがのびのびと過ごすにはまだ小さいような気がした。しかしこれでも小さい方で、怪我しているところを保護されたということだった。もう野生には戻れず、一生をこの囲いの中で過ごすと聞いて、可哀相になる。それにしてもこんな優美な生き物が野生で生きている森なのだから、驚きだ。しかしアムールトラを始め、動物達は森林伐採によって棲み家を追いやられ、絶滅の危機に瀕しているという。

ペンションに戻り、ボルシチの昼食をとってから出発。道路の両側は見渡す限り荒野だった。ところどころ、こげたような木が立っている。野口さんに聞いたところ、森林火災の跡だということだった。伐採。盗伐。4時間はバスに揺られただろうか、やっとクラスヌイヤール村に到着した。ビキン川の川辺でグループに分かれ、それぞれのホームステイ先にボートや車で向かった。私は菅野さんら女性4人でバーリアという女性の家に厄介になった。トイレ、サウナから、不便、不自由、不衛生。上下水道なし。ライフライン(?)。不衛生だが循環している。これでもいいのかも。日本の普段の生活は資源を浪費、無駄にしている。便利から不便には逆戻りできない。どちらが良いのかわかならくなった。

翌朝川辺に集合。これからツアーのメインイベント、ボートでビキン川をさかのぼってテントで一泊するのだ。一緒に行ってくれる猟師達は思ったより大人数だ。こんなにたくさんの人が協力してくれるとは、もちろんお金は払っているのだろうけど、恐縮してしまう。防水チョッキやら防寒着やらを着込んでみんなころころと着膨れている。私は聡子ちゃん、かおりんと一緒に船外機がついたボートに乗り込んだ。先頭と後ろに一人ずつ猟師がついてくれる。さあ、出発!ビキンの第一印象は、一言でいうと、釧路湿原の中を流れる釧路川をもっともっと規模を大きくした感じだ。川岸がヤナギと草原(湿原)であるところが似ている。しかし上流に行くにつれ、森が迫り、原生自然が持つ一種独特な厳かな雰囲気になっていった。しかしとんでもなく寒かった!まるで難行苦行!!空も川面も鉛色。みぞれまで降り出すし、寒くてこごえてしまう。ひたすら耐えるしかない。途中何度か岸に上がり、休憩した。その度にたき火を焚いてまわりを取り巻く。火は本当に有り難いものだと思った。そしてウォッカの回し飲み。飲んだ後喉が熱く、だんだん身体が暖かくなっていく。ウォッカはこの気候では必然の飲み物であることがやっと初めてわかった。ほこら。よそものが猟師の案内なしに、伐採してのろいにあったこと。ウデゲ森の神。

キャンプサイト到着。猟師たちは器用に火をおこし、流木やヤナギの木を使って鍋をかけ、テントをつくり、魚を釣ってくれ、夕食をつくった(日本人も釣ったが)。私達ができない、失ったしまった器用さ、技術、生活力。羨ましく、地に足をつけていないことを感じる。都会人の脆弱さ。

お酒が回りはじめるとだんだん猟師達も親しげになっていった。はたまた求婚する人まで。日本の歌とロシアの歌とのかけあい。一緒に踊る。めちゃくちゃ。どんちゃん騒ぎ。音楽は世界を超えることを感じた。気が付くと満天の星。西村さんが教えてくれた。サウンドバム。星が奇麗だった。

寒くて何度も目が覚めた。早く朝になればいいのにと呟いて目を閉じること数回。気が付くとテントの外から声が聞こえ、人が歩く気配が感じられた。入口から凍えながら外をのぞくと、霜が降りて一面銀色。紅茶が入っていた桶が凍っていた。零下4−5度だったという。昨日のどんちゃん騒ぎと馴れ馴れしさはどこえやら、漁師達はまた一線をおいて日本人にはおかまいなしの様子。またもや漁師達が暖かい朝食を用意してくれた。温かさは何よりのご馳走!(もちろん美味しい)

朝食の後はキャンプサイトからボートで対岸の入り江状になった少し奥まった岸辺にボートで渡った。川岸から森の中に足を踏み入れていくと漁(猟)師小屋があり、その奥に続く踏み分け道をニコライの案内で進んでいった。ほんの短いルートだったが、森の中は豊かだった。ニコライが道沿いの植物を解説してくれた。境界にある、針広混交林特有の多様性。食べ物になる木の実。材の特徴。人々が森と共に生きている、森が生活と直結していることを実感。日本ではほとんど失われつつある森の生活。持続可能。この森林と人々の暮らしとの関係(猟自体が伝統文化である)がこれからも続いていくことを願った。野口さんがいろいろ説明してくれた。世界遺産のこと。国有林、禁猟区?、ビキン株式会社と猟のしくみ。子どもは猟師と一緒に寝泊まりし、しばらくするとこ子どもひとりになる。インディアの成人の儀式。

昼食を済ませ、キャンプサイトをたたみ、出発。一路(?)クラスヌイヤール村へと下る。また寒さとの闘いだと思いきや、だんだんと日が射してきた。空気も澄んで心地よいさわやかさだ。気が付くと快晴だった。
ビキンの空は青かった。それは今まで見たことがない、深ーい青。智恵子抄の中で智恵子が「東京には空がなく、阿多々良山の空が本当の空だ」と言ったことを思い出した。濃い青に、白く光る雲。ビキンも昨日とはうってかわって、光にきらめきながらさらさらと楽しげに流れている。川岸のヤナギは光を反射して白っぽい。その奥の山々は針葉樹の緑と広葉樹の黄色橙色のパッチワークだ(針広混交林であることが実感できた)。緑も黄色橙色も輝いてうきうきと踊っているみたいに鮮やかだった。青い空を昨日は見られなかった大きな鳥(猛禽類だろうか)が、空高く、気持ち良さげに飛んでいく。陽光を受けて川も植物も動物も活発に生命活動を開始していた。まるで息遣いが感じられるようだった。生憎フィルムを切らしていて写真は一枚も撮れなかったが、その分記憶に焼き付けようと、全身で感じようとしてみた(これも「サウンドバム」?)。私はただ呆然とバカみたいに空を見上げ、遠くに去っていく山を眺めてばかりいた。

←戻る 次へ→

(c) 2002 FoE Japan.  All RIghts Reserved.

サイトマップ リンク お問い合せ サポーター募集 English