続くインドネシアの暴力と混乱・ECAの責任をNGOが問う
−−OECD閣僚会合に向け「ジャカルタ宣言」を発表−−



97年に発生したアジア通貨危機は、インドネシアでは最悪の社会危機を引き起 こした。多くの人々が貧困ライン以下の生活に放り出され、ジャカルタや東ティ モール、アチェなど各地で血なまぐさい暴動と抗争が続発した。30年に及んだス ハルト一族の独裁支配の崩壊によって噴出した社会混乱と暴力は、長引く傷を生 み続けている。

スハルト政権下の急速な経済成長は世界銀行、IMFの高い賞賛を受けたが、その 発展はどれほどの犠牲の上になりたってきたのか、そして多国籍企業と先進国の 公的輸出信用機関はどのような役割を果たしてきたのか。インドネシアと先進国 側のNGOがともに先進国の責任を問い、改革を求める「ジャカルタ宣言」を、6月 26-27日にパリで開催される OECD閣僚会議にあわせて発表した。

この宣言は、公的輸出信用機関(ECA)の改革を求める国際 NGOグループが5月 にジャカルタで開催したワークショップに基づいている。ECAとは自国企業の海外 進出を公的資金で支援する機関で、日本では国際協力銀行(旧日本輸出入銀行) や通産省の貿易保険課がこれにあたる。

インドネシアでの鉱山や製紙、発電など多国籍企業の投資には、多くの場合ス ハルト一族が関与しており、多額の利益を受け取っていたことが明らかになって いる。彼らは軍隊や警察を動かして住民や労働者の反対を暴力的に押え込んだ。 現在でさえ、多くの人々が脅迫や誘拐・殺人の恐怖に耐えかね、公害被害を受け たり立ち退きをさせられたりしても声を上げることのできない事情がある。

多国籍企業はこの無法状態から直接・間接に利益を得てきたが、企業の投資活 動を支援してきた先進国のECAもまた人権侵害に荷担してきた。ヨーロッパのほと んどのECAはインドネシアへの武器輸出を公的にサポートしており、また国際協力 銀行などその他の機関も腐敗や人権侵害、環境破壊に十分な注意を払わず企業投 資を支援してきた。国際協力銀行が支援した大規模プロジェクトの一つであるパ イトン発電所は、環境問題に加えて汚職による価格吊り上げが大きな問題となっ ている。

スハルト政権下で海外援助の3分の 1は腐敗に消えたと言われる。その結果発生 した多大な債務は、インドネシア国民にのしかかっているばかりか、われわれ先 進国国民の負担にもなっている。インドネシア経済支援のために注ぎ込まれた多 大な公的資金は、結果的に企業損失の救済になっているからだ。

NGOはこれまで強力な共通環境ガイドラインなど、各国にECA改革のための取り 組みを求めてきたが、OECD等での作業はいっこうに進んでいない。「ジャカルタ 宣言」は、情報公開や環境配慮・汚職防止・人権擁護のためのガイドラインなど、 改革に向けた国際的取り組みをいっそう強めるよう求めている。民主化への道を 歩き出したインドネシアに本当に必要な国際協力を行うため、また他の途上国で 同じ問題が繰り返されるのを防ぐためには先進国側の改革が不可欠だ。最大の援 助国であり、多額の投資を行ってきた日本の責任は重い。

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