ケニア円借款案件(ソンドゥ・ミリウ水力発電事業)
同事業に関する内閣への質問主意書(10月18日)


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2001年1018日

ソンドゥ・ミリウ水力発電事業に関する質問主意書

提出者 櫻井 充 参議院議員

 現在ケニア共和国西部で、日本の有償援助による、ソンドゥ・ミリウ水力発電事業が行われているが、多くの問題をはらむため、この事業は国会や質問主意書で何度も取り上げられてきた。しかし、当事業においては、依然として不透明なところが明確にされないままでいる。

そこで、以下質問をする。

一 ケニアの発展を真剣に考えているのなら、重債務貧困国であるケニアに政府はなぜ無償でなく、新たな債務負担を強いる有償という形でこのプロジェクトに援助を行うのか。

二 政府はなぜ、地域住民の生活を向上させる事業でなく、このような地域住民にほとんど裨益しない大規模事業への援助を行うのか。

三 ソンドゥ川の水源地であるマウ森林は、政府計画による入植と樹木の違法伐採により、急速に破壊が進んでおり、現在では灌木がかろうじて生えている程度である。それにも関わらず、ケニア政府は同森林に更なる入植計画を推し進めようとしている。このままでは同森林水源地としての機能を失い、土砂堆積が進み、発電自体ができなくなるおそれがあるが、政府は事業を進める上で、この森林破壊の問題について現地調査や科学的な検討を専門家の手により行ったのか。行ったのであれば、当事業に対する影響は見いだされなかったのか、明確な数値的根拠に基づき回答されたい。

四 ソンドゥ川の取水地点より下流のソンドゥ川にも、わずかながら水がいくことになるようであるが、それは本来の流量の百分の一という話である。これでは漁業で暮らしていた人のみならず、川の水を使って生活を行ってきた人達の生活は間違いなく破壊される。にもかかわらず、これまでこうした住民の事業に伴う生活への影響は十分に説明が行われてきたとは言えない。また、事業によって移住を余儀なくされたり生計手段である土地を失った人々への補償は、見知らぬ土地への移住か、貨幣経済に不慣れな人への現金給付である。今回の事業によって社会的影響を受ける住民への補償は今後どのような形で進められる予定なのか。

五 移住世帯及び生計手段を喪失した人々への生計手段確保のための支援は、国際協力銀行の「円借款における環境配慮のためのJBICガイドライン」があるにも関わらずほとんど行われていない。なぜ支援が行われていないのか。また、支援が行われているかどうかこれまでに政府は確認作業を行ってこなかったのか。

六 ソンドゥ川の月別の平均降水量を調べると、発電に必要な流量が確保できるのは雨期の六か月間だけである。乾期の間はほとんど発電はできず、年間を通じた電力供給は極めて不安定になる。さらに、今後下流への放水量を見直すことになると、特に乾期の発電容量を大幅に見直さざるを得ないと考えられる。こうした発電容量の見直しを踏まえても本事業の経済性は再検討されたのか。

七 この発電により供給される電力はどのような産業に使われるのか。それらは年間6ヶ月だけの電力で成り立っていくものなのか。また、生活用にはどれくらいの電力が配分されるのか。

八 現在の計画で発電設備の経済性に問題がないのであれば、毎月の発電計画と資金の返済計画について示されたい。

九 ケニアは重債務貧困国であり、債務輸出比率が二百四十二・四%、債務GDP比率が六十一.五%(いずれも一九九八年)で、一九九六年に世界銀行や国際通貨基金、各国政府の間で合意された重債務貧困国への債務問題への対策の中で、パリクラブでナポリタームを適用した場合のみ債務持続性があるとされている。つまり、三年から五年後に削減リスケジュールが行われることが予測され、すべての債務が返済できないことが相当程度予想されるからである。昨年十一月パリで開かれたケニアと関係債権国の協議で、債務削減に至らない条件で債務繰延べに合意したり、ケニアが債務削減を行わない方針を累次にわたり表明していることなど、ケニア側の主張を踏まえて検討することとされたことがあるにしても、政府はなぜケニア側のこのような主張のみで巨額の融資を行うのか。

十 技術委員会は、委員長をケニア電力公社の者が務め、各小委員会の専門家はケニア電力公社によって選出されているので、専門家は必然的に事業者側の意見に偏りがちである。これでは公正な議論が期待されるべくもない。何をもってこのような委員会の公正性を確保しようとしているのか。また、今後技術委員会の改善に向けて政府として働きかけをしていく予定はあるのか。

十一 政府は当事業の経費の内訳について、土木工事の一部に四十四億二千五百万円、コンサルタント会社に十八億七千六百万円としか明らかにしていない。これでは適切に政府開発援助が活用されているかどうかを国民に説明するのには十分と言えない。当事業に係るより詳しい会計資料を示されたい。示せないのであれば、その具体的で明確な根拠を述べられたい。

   右質問する。

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