プロジェクトの概要

 

このプロジェクトは、約6万人の貧しい中国系農民を、青海省からチベット自治区ドゥラン市に入植させ、ダム建設や地下水利用により、乾燥地帯で大規模な灌漑農業を行おうとするもの。この地はチベット・モンゴル遊牧民が住む乾燥地帯である。計画には道路建設や電力・水供給等インフラ整備も含まれている。世界銀行は1億6千万ドルの融資を計画している。

NGOの指摘する問題点

 

(1) 移住計画の問題性
チベット自治区への中国人移住計画を実行することによって、チベット自治区内の人口構成を変えようとする中国政府の政策を正当化し、組織的・財政的に支援することになる。世銀が今回の援助を行わなくても中国政府が人口移動政策を続けるのは明らかだが、本プロジェクトは国際機関がそのような人口移動に積極的に関わるという重大かつ危険な先例をつくることになる。

(2)環境アセスメント基準など、世銀の内規に違反していること
多人数の移住、ダム、灌漑、土地の開墾などを含むプロジェクトは、世銀の分類基準ではより詳細なアセスメントを必要とするカテゴリーAとされるべきなのに、本プロジェクトはカテゴリーBとされた。このほか情報公開、NGOやプロジェクト対象地域の参加、先住民族に関する政策にも適合していない疑いが強い。

(3)プロジェクト地域の社会的問題
プロジェクト対象地域にはすでに民族的対立が見られ、移住計画を実行すれば緊張をさらに高め、また大きな衝突をもたらす恐れがある。また、元来乾燥した貧しい土地であるという点からも、大量の移住者を受け入れられる余裕がない。

(4)環境面でのリスク
ダムや灌漑設備の建設によって、河川水や地下水を大量に利用し、乾燥地帯を農業用地に転換する計画は、プロジェクト自体のリスクを高め、現地の生態系や社会に深刻な影響を与えることになる。

(5)チベット亡命政府の要望を無視していること
世銀はチベットの亡命政府が求める「チベットでの国際開発プロジェクトについてのガイドライン」をまったく考慮していない。(このガイドラインは、基本方針として「人口移動とチベットの植民地化をめざす中国政府の政策を支援するものでない限り、いかなる援助をも歓迎する」としている。)チベット亡命政府は本プロジェクトの再考を求めている。

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これまでの経過について
独立審査パネルの報告書 概要
NGOの要望書
プロジェクト取り下げ(2000.07.06.)


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