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ヨハネスでの活動総括・政府代表団顧問として

2002年9月15日
FoE Japan 岡崎時春

参加の成果はあったか?

1.
WSSDサミットがどのように構成され、今後の国際会議で、どのようにアドボカシーをすべきかが見えて来たことが大きな成果だった、残念ながら、世界実施文章や政治宣言に、NGOの意見を反映させることは殆ど出来なかった。「開発と環境は相互補完的であり、両立は可能」とする政府・業界・一部学者もあるが、まだ実証されておらず、経済開発ための金融・貿易・投資の自由化が、環境・社会(人権)保護に優先するような政府間合意になってしまった。貧困救済、最貧国への配慮も盛られたが、所詮アメに過ぎず、先進国と途上国為政者(国民不在)からのムチを強め、南北格差をますます広げ、地球規模の環境破壊や地域紛争・テロなどが多発する事態に歯止めは掛からなかった。リオ原則も適用範囲が狭められ、10年前よりも後退したのではと言う見方も出来る。

2.
UNDP,UNEP,FAOなどの国連機関、あるいはWRI,IUCN、CIなどの国連依存の環境団体が数々のイベントを行ったが、講演者が超一流であったにも拘わらず、盛り上がりに欠けた。国連機関の肥大化とともに、予算の奪い合いのためのイベントのように思われる。国連への最多額出資者である日本の国民は、このことを殆ど知らないのでは? IMF,WTO,世界銀行など非国連・国際機関が米国の後押しで強まる中、国連のリーダーシップが改めて問われたが、ブッシュの不参加と米国へのブーイングの中、この問題は先送りとなった。

3.
今回は所謂タイプ1とタイプ2に別れ、タイプ1は政府間合意による「世界実施文章」「政治宣言」の採択であり、タイプ2は任意のパートナーシップ形成による、行動プロジェクトの立ち上げであった。問題にしたいのは、タイプ2の方の政府と業界によるプロジェクト形成で、タイプ1での政府間合意を一部で勝手に解釈して、プロジェクト形成している節がある。日本政府も全部で10分野・29項目のタイプ2イニシャティブを立ち上げようとしている。これは全て国民の税金で賄われる筈だ、国民の合意はあったのだろうか? ヨハネスではNGOはここには殆ど現れず、合意ずみとの印象を受けた。アドボカシーを行うルートやルールが不明のまま、蜜室でこれらイニシァティブが企画された嫌いがある。NGO側もサイドイベントだからと軽視せず、早い段階からこれをWATCHする必要がある。タイプ2のイベント催行自体が大きな税金の無駄使いに見える。


参加した会合・イベント

1.サントン・コンベンション・センター
○「世界実施文章」の交渉に参加?
  非公式会合・ウィーンプロセス・コンタクトグループ会合を傍聴
○プレナリー・生物多様性とエコシステムに参加(傍聴)
  プレナリー・エネルギーに参加(傍聴)
○ 「政治宣言」の推移は判ったが、関与は出来なかった。

2.ウブント村・政府関連の展示とイベント
○水/森林パートナーシップ・シンポに参加
○JBICシンポ/電気事業者シンポに参加

3.ナズレック・NGOの展示とイベント視察

4.IUCN、世銀などの個別シンポに参加


顧問制度に関する現時点でのコメント

1.日本政府と顧問とのコンタクト 
始めから最後までルートもルールも決まらず、散発的・ゲリラ的に行っただけ。
顧問の機能が予め決ってなかったことが問題である。また政府側にNGOからの情報を活用しようとの姿勢が見られなかった。今回のWSSDでは余りにも広い課題が取り扱われているので簡単にはルールが決らないと思うが、課題とその担当者の一覧表でも、顧問に事前に配布されていれば良かった。

2 .顧問指名時期が遅すぎた
政策提言型の国際NGOはPrecom1あるいはプノンペン地域会合から活動していた。一方、日本政府はWSSDの実施文章に対する交渉方針を、バリでのPrecom4以前に決めていた。顧問が8月以降あるいはヨハネス現地において、意見具申しても政府側に考慮に入れる余地がなくなっていた。少なくとも半年前くらいには任命が行われるべきであった。今後の教訓として頂きたい。

3 .顧問の取り扱い(専門)分野について
今回5人がNGOから選ばれたと言うが、現地NGO連絡室に出入りするNGOは、政策提言型が多く、これらを代表するようなNGO顧問は2−3人しかいない。今回はグローバル化・貿易とこれに関わる問題が最大の焦点だったのに、これに関われる顧問がいなかった。日本政府はこの分野のアドバイスを嫌ったのかも知れないが、顧問の役割を明確にした上で適任者を早めに選定すべきである。

4 .顧問の選定についての透明性の確保
政策提言型のNGOは今回の顧問選出に大きな不満を持っている。どう言うプロセスでこれが選ばれたのか、透明性が確保されていないと。実施文章の交渉を中心ととしたアドバイスなら、開発型や環境教育型NGOより、政策提言型NGO中心に選ばれるべきで、応募資格等を規定した上で「公募」もありうるのではないか。

5 .政府はNGO顧問をもっと利用すべき。
FoEJのような国際NGOは、世界数10カ国から100人に近いメンバーが、サントンでのアドボカシーのために来ており、情報収集活動は日本政府よりよっぽど早い、またこの中には、政府代表に入っているメンバーが私を含めて9人もおり、各国政府の動きを牽制することも出来る。日本政府は今回この点が理解出来なかったようだが、次回以降はこのことを前向きに利用して行こうと考えれば、顧問は政府間交渉に取っても役に立つ筈だ。


顧問としてではないが、今回のプロセスに関するNGOとしてのコメント

1.
ナズレック(NGO)会場はガラガラであった。入場料も高価で南ア市民の参加を大きく阻害した。場所もサントンの会議場からかなり遠く、総じて国内のみならず海外からのNGOの参加を抑制することとなった。大きな国際会議でのNGOや市民の暴動を恐れてのことかも知れないが、今回は不祥事は起こらなかった。NGOも成長していることを理解して欲しい。
ウブント村はサントンに近く、ナズレックと一緒にどうして出来なかったのかと問いたい。ウブント村のイベントも議員団の参加があったものを除いて総じて閑散であった。

2.
ウブント村で行った日本政府関連のパートナーシップ・シンポにNGOの参加がなかった(水と森林)。タイプ2の政府主導のパートナーシップ・イニシャティブが市民参加のないままに企画立案され、実行段階に入ってからしか、実践型のNGOや現地住民が参加が行われてないことは問題である。タイプ2に対する顧問の関与もありえたのではないか。別の見方をすると、ウブント村のイベントは、議員や政府の幹部に来
て貰い、これら政府系特殊法人(JBIC,JICA、IGES,ITTO,APO,NASDA,JAMSTEC,日本国際問題研究所、経済産業研究所など)がその存続のための、WSSD参加と言うお墨付きで来年度以降の予算確保を狙っての参加と言えなくもない。パートナーの特にNGOの参加は期待されてない?

3.
この種の国際会議ではメディアとの接触が一つの大きなポイントである。最初は顧問であるが故にメディアから各種のコメントを求められるが、今回については、情報の入手ソースがバラバラで不確定であったため、日を追うにつれ、メディアが離れて行った。環境省系列のメディアとの接触は多かったが、霞記者クラブからは全く接触がなかった。顧問は外務省のメンバーとして認知されてないのだろうか? メディアさえも日本は縦割りがひどい、これは外務省に言うべきことではないが。 

4 .
縦割りと言えば、顧問が政策関与で動きにくい原因の一つは、交渉団の縦割りが複雑であることだ、一つの省内でも担当が分かれていて、うまくコンタクトが出来ないし、タイミングよくインプットが出来なかった。顧問対応の担当をおいて頂いたが、交渉の中味に関する担当も省別位でおいて頂ければと考える。


顧問として日本政府の交渉担当者にアドバイスした項目・世界実施文書について

1.(19e)再生可能エネルギーの数値目標
これはヨハネスへ出発する前から、エネルギー関連の日本のNGOと外務・経産・環境各省にお願い、現地でも私単独あるいはNGOと共に訴えたが、経産省との見解の乖離は大きく、日米の力に押され、Clean Coal Technologyが入るなど、この項目そのものを落とした方がマシと言う結果になった。

2.(24)SanitationへのAccess出来ない人:2015年までに半減
これは辛うじて生き残ったが、日本政府の評判が良くなかった。

3.(36)京都議定書
文言は残ったが議定書から離脱した米国に配慮した文言を日本が提案しこれが通った。

4.(42)Biodiversityの喪失を回復する年次目標2010年
年次は残ったが、技術移転や回復のためのインフラ投資を奨励するなど、逆に生物多様性の喪失を加速するのでは、と心配する文面となった。

5.(45ter)Corporate Accountability
FoEインターの最大のキャンペーン目標であったが、曖昧な文章ではあるが残ったことは評価したい。東電の不祥事のニュースが途中飛び込んで来て、外務省の交渉担当者がチャンとNGOの言うことに耳を貸してくれたことも評価したい。但し、国際的ガイドラインやモニタリング制度の確立と言う文言は落ちてしまった。今後の課題であろう。

6.(91d)貿易に関するSIA(Sustainability Impact Assessment)
Voluntary use of EIAまで大幅後退。環境省は日本の中ではまだ理解が進んでないと。

7.(92)WTOの中でのMEAs(多国間環境条約)の取り扱い
‘in support of program agreed through WTO’ と言うどちらかと言うとWTOを優先すると言う文言になってしまった。経済開発・貿易・投資が環境・人権に優先させようとしている米国の政策に日本政府蛾追随したのは大変残念である。日本政府のこの方針はバリでの準備会合以前に決まっており、顧問任命のずっと以前からここは動かしようがなかった事と諦めた。

8.(119undeciens)開発プロジェクトへのStrategic Impact Assessmentの適用

9. (151)Participationに関するGlobal Multilateral GuidelineあるいはRegional
Initiativeの立ち上げ。リオ原則であった筈だが今回は抹殺された。項番のみ残った?

10.(その他)リオ原則
Precautionary Approach(Principleから後退)(22項など)およびCommon but Differentiated Approach (75項など)もその適用範囲が、開発ではなく環境に関する部分に狭められるなど、1992年時点よりも後退した実施文章になったとNGOは判断している。
(私のコンタクト相手は外務・環境・農林・経産・財務・国交・厚生の各省の課長および補佐のクラスが多かった)

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