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参考資料

Defraプレスリリース:
英国環境大臣が政府調達木材を合法且つ持続可能なものにすることを発表(2004年11月9日)
 

世界の主要な森林認証制度の現状と評価 〜CSA, SFI, FSC, PEFCの比較〜

現在、世界には様々な森林認証制度が乱立している状態である。国際的にはFSCとPEFCの2つの勢力に2分されてきているが、各国・地域レベルでみると、主要な林産物生産国がそれぞれ独自の森林認証制度を整備しつつある。また、各国の認証制度は、ゆるやかなアンブレラとなっているPEFCに参加するものも多い。

日本にはFSCとSGECの二つの制度があるが、SGECは現状、どの制度とも独立した状態となっている。今後、世界的に森林認証制度の普及が進み、日本にも認証ラベルをつけた木材の輸入が拡大すると予想されるが、そのような国際的な流れのなかでSGECは海外の認証制度に対してどのようなスタンスをとって行くのかが問われている。

以下に、海外の代表的な森林認証制度に対する世界のNGOの評価("On the ground" および"Footprints in the forest")を報告する。これらは我が国に対しては構造用木材の主要輸出国であるカナダ、アメリカ、欧州の代表的な森林認証制度であるCSA、SFI、PEFCと、国際的な森林認証制度の草分け的存在であるFSCについての比較を行ったものである。


評価できる点 問題点
 CSA (Canadian Standards Association)
・ 改正されたCSAの基準には、最低限のパフォーマンス要求が含まれた

・ CSAは参加プロセスに関する記述を充実させてきた。個々の審査において、広範な利害関係者の参加と協議を設けている

・ CSAは非常に発展したCoCシステムを有している
・ 企業は適用する認証基準を自ら作り出すことができる。従って、森林管理のパフォーマンスを一貫性をもって計ることができない

・ 地域の利害関係者の参加に関しては良く規定されているが、企業のコントロール下にあり、評価対象となる範囲が非常に幅広く多岐にわたるため、森林管理の改善を図る上で真に効果があるかがわからない

・ 先住民の権利と利害に対する取組みが不十分である
 SFI (The Sustainable Forestry Initiative)
・ いくつかの危機的な森林に対する保護への認識を持つなど、基準の質が改善していること

・ AF&PAに対するSFIの独立性は拡大している。そしていくつかの環境NGOがSFI の評議会に参加するなど社会参加も拡大している

・ SFIの基準を改善すれば、SFIのフレームワークはアメリカとカナダの林産事業体の施業を改善するポテンシャルがある
・ ほとんど何も改善しない状態でも認証が取得できる。自然林を植林地に転換することを防止したり、希少な危機に瀕している種を保護したり、先住民や労働者の権利を含む社会問題に関わることを含む、最小限のパフォーマンス基準がない

・ 企業は審査するときに適用する基準を自らカスタマイズでき、実質的に独立した認証制度となっていない。また、「独立した評議会」が設けられてはいるが、その評議会は依然として林産業関係者によって占められている。

・ 生産物のラベリングに要求される正式なCoC認証がない。また、SFI認証を受けた企業は、非認証材に対してもラベリングが可能となっている。SFIラベルをつけた生産物であっても、ラベルに記載がない限り、SFIの認証を受けていない森林から産出されているものもある
 FSC (Forest Stewardship Council)
・ 基準の作成を含むあらゆる意思決定に対して、経済・社会・環境の各利害関係者によるバランスの取れた参加

・ 緻密でよく定義された手続き

・ 信頼できるパフォーマンスにもとづいた基準による消費者ラベル

・ FSCの認証林は植林地に転換するための天然林の伐採や、遺伝子組み換え樹種の使用を禁止している。また、保護価値の高い森林の保全が盛りこまれ、先住民の権利に関して明確な認識を持っている。
・ 国・地域基準が欠落している点は問題である。審査機関が自らの判断で地域基準を選定する状況はできるだけ速やかに改善しなければならない

・ 文書の上で要求されている協議プロセスは必ずしも常に実行されているわけではない。適切な協議プロセスの実行が確保されるような、明確な改善が必要である

・ 現状の大規模産業植林の認証は、多くの国で植林事業に対する抗議運動の妨げとなっている。植林に関する「原則10」の改訂が緊急に求められる
 PEFC (Programme for the Endorsement of Forest Certification Schemes)
・ PEFC傘下の各認証制度に対して、ILO基準の採用を要求していること

・ いくつかのメンバー国における透明性の拡大。特にスウェーデンとドイツでは、認証審査報告の要約を公表することを予定している

・ 五年ごとに国別基準の改定を行うことを要求
・ PEFCの各国基準のばらつきにより、PEFCが供給する製品の一貫性が損なわれており、消費者ラベルとして不適切なものになっている

・ 基準の開発と同様、制度の運営は森林所有者と林産業界が支配的であり、認証制度として独立性に疑問がある

・ PEFCは森林管理単位レベルでの認証を要求していない。PEFC傘下のほとんどの制度は地域認証を行っている

■ まとめ
一口に「持続可能な森林管理を目指した認証制度」といっても、持続可能性のものさしである認証基準は、選定されている項目、ハードルの高さ、審査方法に大きな差異がある。また、製品ラベリングについても厳密なCoCを有する制度と、認証材の分別管理が緩い制度まで、そのレベルにはばらつきが大きく、需要者にとっては混乱を招く恐れがある。

このような違いは、それぞれの制度の運営において、関係するステークホルダーの参加レベルに違いがあることから生まれてきている。持続可能な森林管理のためには、経済的持続性だけではなく、環境的および社会的持続性も等しく追求されなければならない。そのためには、制度の運営に当たって林産業に過度に偏重してはならず、環境保護団体や人権団体、先住民団体、地域社会に対しても公平に参加の機会が与えられていることが必要だ。このような視点で4つの制度を見比べると、現状はFSCが最も信頼の置ける認証制度であるといえ、SFIやPEFCには改善すべき課題が多いことがわかる。

SGECは、日本に相応しい森林認証制度を目指すとしていることからも、国内の人工林施業を想定した制度であり、原生林施業を想定に作られた海外の制度と一律に比較することはできないが、多様なステークホルダーに公平な参加の機会を与え、透明で開かれた認証制度として認知されるよう、今後も努力を続けなければならない。今後、海外の制度との関係を考える際にも、こうした視点でそれぞれの制度の違いを十分に見極めなければならない。信頼の低い制度との相互認証がされてしまえば、自らの評判を落とすだけではなく、パフォーマンスの低い認証材が相互ラベリングをつけて日本のマーケットに押し寄せてくることにもなりかねない。

※本報告は、(社)国土緑化推進機構の「水と緑の森林基金」2003年度助成事業における活動の一部として作成したものである(報告書原文(PDF)

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