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企業の生物多様性に関する活動の評価基準検討委員会 第1回 議事録まとめ
主催:国際環境NGO FoE Japan
日時:平成20年10月18日(土) 10:30〜12:30
場所:地球環境パートナーシッププラザ EPO会議室
出席者:(委員)足立委員、上田委員、岡本委員、坂本委員、佐藤委員、田中委員、永石委員、日比委員、森本委員(事務局)中澤、宮崎、籾井、能勢、攝待  (委員一覧

※下記の議事録には、用語解説のためWikipedia等へリンクしているものがありますが、あくまで参考であり、リンク先の情報は必ずしも当団体Friends of the Earth(FoE)の公式見解を表すものではありません。

●事前報告等
国際環境NGO FoE Japanの中澤による開会挨拶
各委員の自己紹介
検討委員会の委員長として上田委員を選出
調査の趣旨と方法について事務局から説明

●本調査の趣旨及び方法について
委員:日本の企業が遅れている現状を前提として評価基準を作成しても意味がない。10年、20年先を考えた、理想的な基準を作るべき。

委員:問題は、事務局資料にある2つ(企業にとって生物多様性に馴染みがないことと、客観的な評価基準がないこと)に集約されると思うが、資料で想定している基準と企業が想定している基準には大きな差がある。企業は生物多様性保全に取り組むために数値化を望んでいる(例:植林の本数)。多くの企業がこれを生物多様性への貢献であると考えている。生物多様性の概念の理解がかなりずれている。生物多様性の定義が必要ではないか。

委員:日本の企業の取り組みが遅れている主な理由は、「客観的な基準がないこと」なのだろうか。それも確かにあるが、もっと様々な理由が見られる。委員の皆さんは基準がないことが主な理由とお考えか。そうならば指標作りは重要な課題だが、そうでないならば、指標が作れなくても、企業の活動を促す他の手立てもありえる。また考え方や取り組みも企業によって様々。どの段階の企業の活動を促そうとしているのか。

委員:基準を作成する場合には、何を評価するのかを明らかにする必要がある。1番と2番の間に非常に多くの段階がある。事情はセクター毎、企業毎に違う。公開ヒアリングでセクター毎に検討していくのはいいアプローチ。しかし今回もっと全般的なものを目指すのだとすれば、それはかなり難しい。GRIの指標などは一般的な基準であるが、どの程度意味があるのかは疑問。

事務局:1番には大きな問題があることは事実である。しかし、今回は、これはとりあえず置いておき、企業として生物多様性に影響を与えていることはわかっているので自社の取り組みをどう評価していいのか、という企業を前提として検討していきたい。世界的には、鉱山企業がノーネットロスを掲げており、NGOで生物多様性のノーネットロスを評価基準に掲げているところがある。これらが一つの例であると考えている。このような世界的な例を踏まえ、日本企業が物差しを考えるとよいであろう。本検討委員会で検討すべき基準は二つある。1つは企業が自社の取り組みを改善するための基準、もう1つは企業の生物多様性への影響を評価する基準。前者がマネジメント指標であり、後者がパフォーマンス指標である。

委員:現場で環境アセスメント(EIA)などに関わっているが、場によって生物多様性への対応が変わって来ている。植物・動物の把握が難しい。その辺りも含めたモニタリング基準を突き詰めなければパフォーマンス評価は難しい。

委員:NSC(Network for Sustainable Communication)では5段階の評価基準を作成した。日本企業の中には屋上にビオトープを作って満足しているところがある。海外の例では100haの土地を購入し、1haのみを開発し残りをNGOなどと協力して保護することがある。基準は、企業が使用するためにはできるだけシンプルなものが望ましい。

委員:市民の立場から考えると、企業は商品やサービスを提供しているため、調達やトレーサビリティを明確にすることが大切(例:FSCグリーン購入法など)。企業は商品に対してどういう責任を持つのか、市民が安心して企業が地球環境保護に貢献していると感じることができるか、など、評価基準では、企業だけの話ではなく市民の視点を入れることが大切。

委員:同意見である。せっかくFoE Japanという市民団体が作成するものであるので、企業側の要請が多いということもわかるが、企業が先に走って市民が置き去りになってはよくない。市民も参加しながら指標を決めるプロセスも大切に。

委員:短期間にまとめるので市民の意見をどの程度反映させるかは限られているが、非常に大切。例えば、せっけんのポンプ付きのボトルでは、泡式であれば少量ですむところを石鹸液を大量に出す方式となることで収益をあげようとしている。また、屋上にビオトープを作ることで十分としている例があるなどがあるが、これらはナンセンス。評価基準は、すべてカバーするのは難しいので、様々な配慮点は言及にとどめるということがスマート。

委員:企業はやはり本業での生物多様性保全を考えているが、本業以外のところが見捨てられるのは非常に危険。例えば、生物多様性の減少の原因は農地への土地転換が大きな要因であるが、これは日本企業が皆サプライチェーンを見直せばそれが解決されるのか?幅広い視点が大切。例えば、海外で森林伐採し、日本で植林するのはナンセンスである。

委員:企業が外部の視点なしに自分たちだけの視点で評価することはあり得ない。社内評価もするが、それは外部ステークホルダーへの説明責任が理由。企業にあわせたものを作るということではなく、企業がきちんとやっていることを社会に対してアピールするために使える基準が必要である。そうしたものであれば社会と企業の双方にとって本当に役に立つ。

委員:今、この検討会でやろうとしていることは、環境アセスメントの中の生物多様性の評価をどうしようかということと同義である。日本の場合、EIAは政府のプロジェクトのみで民間は対象でないため、企業に経験がない。アメリカのNational Environmental Policy Act (NEPA)では、 民間も対象となる。日本の制度にとらわれず、NEPAなど本来のものを見ておく必要がある。評価には絶対的な評価と相対的な評価、また、定量的な評価と定性的な評価がある。例えば環境基準などは絶対評価であり、それですべての地域やケースを評価しようとするとかなり無理がある、という経験を日本はもっている。生物多様性はケースバイケースであり相対的に考える必要がある。日本は環境アセスメントの世界では、徐々に絶対的な評価から相対的あるいは手続き的な評価に変わって来ている。全体に応用する基準を作成するのは難しいというご意見があったが、理念的なもの、手続的なものであれば可能ではないか。日本の制度は理念が抜けていて、技術的なことや形式的なことにすぐ行ってしまう傾向がある。ノーネットロスのような世界標準になりつつある理念は導入できるのではないか。

委員:企業の視点か市民の視点か、との話が出たが、自然の視点もある。当団体はここを大切にしたい。市民の視点と自然の視点がうまく組合わさるところが重要で、そこに企業がうまく合うといいと考えている。例えば、新潟の酒造会社の事例だが、いい酒を造るためにはいい水が、そのためにはいい森が必要と考え、地域の生物多様性を保全する活動を行っている。企業規模としては小さいかもしれないが、この企業への評価は非常に高い。こうした事例を一緒に考えて行くことが必要。

委員:基本的には市民が、生物多様性に貢献する企業を、そのような企業の商品やサービスを購入することを通じて応援することが大事。

委員:生物多様性の定義については、欧米の英語の翻訳でどんどん変わっている。行政用語として使用する場合、広く自然環境という意味で言っている場合もある。そういうレベルでやるか?遺伝子レベルの生物学的なところからやっていくのか?これを統一しておく必要がある。

委員:企業が生物多様性に取り組み始めて5、6年経つが、自然環境がどんどん劣化している。これはもう待ったなし。

委員:企業には見せかけが多い。例えば、福井県では干潟が93%埋め立てで喪失する。自然が戻る指標として「うなぎ」がどのくらい遡上するかを専門家が提案したが、市民は単にうなぎだけが増えればいい、と考えがちだが、それを可能とする生態系の保護が重要である。

委員:生物多様性という言葉を、自然環境や緑の保全などの言葉と同義に使うのはよくない。現在の生物多様性保全の流れは生物多様性条約(CBD)から来ている。CBDの定義をそのまま使えばいいと思う。

委員:生物多様性の問題は、社会問題でもあり、生物学のみならず、広い視点で考えるべき。

委員:「生物学的」と言った場合に人によって解釈が違う。CBDのレベルでいいのではないか。世界的には一つ、環境保全には、アジェンダ21の中にあるように女性問題や先住民族の問題が含まれており、同じように生物多様性も考えるべきでないか。

委員:「遺伝子レベル」での議論となると、実際の、失われた生態系や種の復元プロジェクトにおいて、喪失した遺伝子を復元させたり、それを評価したりすることは難しい。遺伝子レベルの議論となると現実的に実現が難しくなる。

委員:現場のローカルなレベルではローカルな地域個体があり、遺伝子の混雑の問題を考えなくてはならないことが多い。


●分科会の設置について
マネジメント指標分科会の委員長には足立委員、パフォーマンス指標委員会の委員長には田中委員が選出された。


●傍聴者意見
傍聴者:本業でのインパクトと、本業以外の社会貢献の両方を考えるべき。コアビジネスが直接的に生物多様性へ影響する場合はよいが、その影響が間接である場合には、それは、社会貢献とは違うということを考えるべき。

委員:間接的影響としては、企業が何か(家具など)を購入する時に考慮すればよい。

委員:本業であろうが、販売促進であろうが、生物多様性という視点でだけで見ると、生物多様性保全に貢献するのであれば、何でもいいからやって欲しいと思うが。

委員:企業の取り組みは、グリーンウォッシュ(見せかけのもの)になる危険性がある。社会は、企業の取り組みの本当の意味を評価することがまだできていない。それが可能になるような基準を作成するのがこの委員会の役目ではないのか?最初から完璧な指標はできないが、最初のステップとしての基準を考えるといいのでは。

委員:CSRレポート大賞などは、悪影響をもたらしている。賞ができて2〜3年経つと高いランキングを得ようという社内圧力が出てきて、取組みが表面的なものになってしまう。指標等はよほど気をつけなければならない。

委員長:シンプルな基準の下にしっかりした理念を作ることが大切。

傍聴者:指標は一度決めてしまったら、その効率を上げるためにその方向にしか動かない。

傍聴者:生物多様性については、まずは生物の調査から始る。今後はどういう方向性なのか?

委員:環境アセスメントでは、生物学的ベースラインをどのように把握するかが基本である。生物学的に詳細な情報を見ようとしても、特に途上国などでは得られる情報は始めからきわめて限られている。生態系への影響を評価する際、質、空間、時間の3要素を漏れなくバランスよく評価することが大切。これらの一部の細かなことを気にしていると、木を見て森を見ず、ということになりかねない。

委員:同意見である。生物多様性と生態系を区別して理解することが必要。「生物多様性」というと人間が基準で、人間が生物多様性のために行う行動は、往々にして生物にとっては良くない行動を取っている可能性がある。

委員:具体的にどの種がどうかということを指標として挙げることもあるだろうが、対象となる地域の生態系に詳しい人たちと調査が行われたか、という手続き自体も評価指標として重要。

委員:生物間の相互作用や進化など、生物多様性が動いていることを踏まえ、影響を最小限にすることが重要。

委員長:何か小さなことでもやっていけば大きな流れになることがある。この委員会は何かの流れを作り出す初めの一歩でありたい。皆さん、ありがとうございました。

全員:ありがとうございました。

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