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Vol.16(16 June 2003)
 
 
曇時々雨、国連温暖化会議終わる

  六月四日から十三日まで、独ボンで開かれていた国連気候変動条約の事務級会合(補助機関会合)が閉幕しました。 米国の不参加から来る京都議定書の将来、とりわけ2012年以後の時期排出削減目標の行方への不透明感が募る十日間でした。 ロシアは九月にモスクワで大きな地球温暖化の国際会議を予定しており、その前後に批准表明をするのではという期待が一部で取り上げられています。 もし九月十三日までにその手続きを終えれば、次回条約本会議(ミラノ、十二月一日から十二日まで)は議定書の最初の締約国会議となることができます。 また、それが遅れた場合、失われた勢いを回復するため、条約事務局では来年の本会議と議定書会合を年半ばに開催することも考慮されているようです。

■浮上する適応問題

  国連科学者機関・気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2007年に予定する第四次評価報告の準備が既に始められていますが、2001年に出された第三次報告の内容を、今後如何に継続的に政府間交渉の議題に組み込んで行くかが交渉されました。 日欧が求めた将来の交渉のための作業計画は米・途上国の反対で落とされました。 また、議題案として、温暖化の悪影響への適応と、排出量抑制・削減がそれぞれ議題化される一方、先進国が求めた両者を統合して考慮する第三の議題は、排出抑制義務を恐れる途上国の反対で、今後考慮するとの表現に留まりました。 この件で、国別意見提出と次回十二月会合直前の非公式交渉が予定されています。 この第三次評価報告の扱いは、条約二条の危険な気候変動を防止するとの根本目標と併せ、現在の2012年までの国際対策を越えた次の道程を公式議題に載せるため、重要と見られています。

■小島諸島国連合の訴え

  条約の四条八項及び九項は地球温暖化の悪影響に対する適応能力への支援強化を定めています。 またこの二項は、先進国が依然拒否する、先進国の対策で失われる産油国の収入の補償の議論を含んでいます。 深刻化する海面上昇や自然災害増加の脅威に直面するツバルやサモアなど南太平洋を中心とした小島諸島国連合(AOSIS)は、この面での研究、適応能力育成、監視などの体制強化のため、合意を図るよう訴えましたが、サウジアラビア、クウェート、リビアなど産油国が途上国全体を抑え、欧州、日米の小島諸島国への支持にも拘わらず、交渉部会は決裂、次回会合は白紙から再開する異例の結果となりました。

■地球環境の変化への適応には膨大な資金が必要

  京都議定書の運用規則を定めた二年前の条約会議では、最後発開発途上国基金、特別気候変動基金、適応基金の三つの新たな資金援助機関が、条約の公式の資金機関、地球環境ファシリティ(GEF)の下に設けられました。 既に運用が始まっている最後発開発途上国基金に続き、特別気候変動基金が次回本会議で運用を開始することは既に昨年の本会議で決まっています。 しかし、この基金の優先対象や運用則はまだ詰められていませんでした。 今回の途上国提案では、適応への資金援助を最優先することを求めています。 排出量が急増する一部途上国では排出削減への支援も含めるべきとする日欧に対し、排出削減へのいかなる言及も受け付けられないとする途上国が対立、合意された交渉部会案では排出削減支援の可能性を僅かに残す表現に留まりました。 先の合意に沿って早急に運用を開始すべしとする途上国の意見で、12月本会議前の更なる国別意見提出や非公式交渉は削除されました。

  適応の範囲は、急増する自然災害への予防能力強化のため、エネルギー関連のインフラや農業改革から廃棄物処理、生態系保護まで広範囲、深刻かつ潜在的に膨大な額に上ります。 先進国がよほどの巨額の拠出に合意しなければ、この基金は大海の一滴ともなりかねません。 この為、本会議期間中、政府間交渉と別に設けられた世界銀行、オランダ政府、欧州連合がそれぞれ開いた講演会で、先進国の開発援助政策に地球温暖化の悪影響への適応を組織的に組み込んで行く方向が示され、参加者の活発な議論を呼んでいました。 またこの関連で、別途議定書を作る、地球的な災害予防・救助の体制の可能性なども議論に挙がっています。

■途上国での森林吸収源事業

  京都議定書の下で設けられたクリーン開発メカニズムでは、先進国が途上国で実施した排出削減事業の削減は移出量を議定書目標達成に編入できることが謳われています。 運用規則では、これに植林・再植林事業による二酸化炭素吸収量を含めることができることになり、植林・再植林活動の定義や事業規則を十二月の本会議で採択することになっています。 主に先進国の温室効果ガス排出が起こしてきた温暖化の問題を途上国の土地を長期間占有して解決の一助にするという倫理上の問題の他、森林火災や気温上昇で蓄えた二酸化炭素が最終的には大気に戻ってしまうという永続性の問題、社会・環境影響評価を国際規則に組み込むかどうか等が焦点となりました。 欧州は五年毎の更新を要する暫定削減認定を提案しています。 二酸化炭素が大気中に戻ってしまう危険を保険で補う加提案は、投資国と実施国間の取引を担保しますが、環境面の永続性の問題を何ら解決していないと見られています。 欧州は環境影響評価を事業手続きに含めるよう求め、具体的な要点一覧を提出しましたが、加日やブラジル、ボリビア、セネガル、マレーシア等の反対で義務とはならず、事業準備文書の自主項目の一つとして附記(ANNEX E)されるに留まっています。 これら諸国はこの附記も長すぎるとして、削除若しくは前文で短く言及するに留めるよう求めています。 今回は以上の点を中心に各国の見解が併記された交渉部会議長案が用意される所までで、決定は次回に先送りとなりました。

現在の議長案は以下で見れます:
https://unfccc.int/resource/docs/2003/sbsta/l13.pdf

■貿易体制と環境条約

  昨年のヨハネスブルグサミットでも取り上げられたように、二国間多国間の貿易協定から成る国際貿易体制と、貿易制限を実施手段に取り入れた国連環境条約との間の潜在的な衝突の可能性が高まっています。 既に世界貿易機関(WTO)が、貿易促進の観点からこの問題を協議中で、環境条約を中心とした国連体制の合法性が問われています。 京都議定書の名前が挙がる中、国連気候変動条約側は世界貿易機関での議論を報告しましたが、本会議では各国政府内での貿易、環境担当間での協調強化を述べるに留まりました。 簡単な事務局報告は以下で見ることができます(英語):
https://unfccc.int/resource/docs/2003/sbsta/inf07.pdf


飛び火し深まる国際対立のなかで

  前号で紹介した条約事務局の2004−2005年予算案が今会議、最後の最後まで、最も対立した議題となりました。 米国が、議定書関連の支出を禁じる議会決議の下に強硬に求めていた京都議定書の支出分の分離は交渉部会議長案から消え、末尾脚注で一定の割合で同国の条約への拠出額を引込む旨が明記されています。 日本は議定書への米拠出が望めないまま日本への国連基準を越えた拠出を求められる懸念から、予算額全体の圧縮を求めています。 欧州連合内部では、かつての東西対立の様な両極化を避けひとつの世界を追求する英国と、国連の多国間主義の原則を守り、超大国米国へ対抗できる統合欧州を目指す仏独との間で議論が分かれ、真に今後の世界観の対立となっています。 合意の見通しが立たず、次の会合まで結論を先送りする議論が出る中で、事務局長はもし今回予算に合意できなければすぐにも職員の解雇を始めねばならず、2月には事務局自体の閉鎖に追い込まれる旨を通告しました。 この間、仏代表団に仏首相が直接指示を与えていると言われる一方、露は状況が代表団に委ねられた権限を越えているとしてモスクワの指示を仰がねばならないと述べました。 結局、予算案は合意できず、次回十二月に先送り、それまで事務局長に各国に暫定的に請求する権限を与えて終わりました。 安全保障理事会のイラク問題で表面化した欧米間の対立が続く中、このような国連システムへの影響の深刻化が予想されます。

(六月十五日 ロンドン)

お問い合せ:気候変動プログラム・小野寺ゆうり
Email:energy@foejapan.org
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