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Vol.10(5 September 2002)
 
 
政治宣言採択、そしてサミット閉会へ
 本委員会で世界実施文書の部分的な修正が3日深夜まで議論されたあと、本文書が公式に採択された。ここでの修正点は第9章の実施手段での多国間環境条約と多国間貿易協定の関係に関する部分と企業責任に関するものである。EUと米国の間でコンタクトグループでの同章の議論の終わりに合意があったとされ、国際的な企業責任のしくみづくりを既存の国際枠内に留める趣旨の注釈をコンタクトグループ議長が提案したが、そのような密約の手続き上の有効性への疑問がエチオピア、ノルーウェーから出、NGOの積極的なロビーの甲斐もあり、この案は採用されていない。採択の後、世界実施文書は翌日の総会で正式に採択された。
 かねてから非公式な折衝が伝えられていた政治宣言だが、2日発表の初案はその交渉の進め方や長さ、構成と言ったことが指摘され、実質的な内容の交渉までなかなかたどり着けなかったと言われる。国連会議の成果を3月に開かれた国連開発資金会議のモンテレイ合意及び昨年暮れのWTOドーハ宣言を越えさせないとする米国と、政治宣言で独自色を出したい南ア政府のせめぎ合いである。国連を今後の地球ガバナンスの補完的機構に留めたい米の思惑がそこにも現れている。結局、世界実施文書の合意の遅れにより政治宣言交渉の時間を十分取れず、4日の最後の総会で採択された内容は初版を大幅に縮小しこれまでの議論の表面を要約しただけの全く内容の伴わないものとなったことが、このサミットの失敗を如実に示していると言える。
裏切られた地球サミット 次はメキシコで
 9日間の協議の末、地球サミットはついに最終日となった。実施計画の最終文書には、新しい具体的な目標が二つ入った。1)2015年までに基本的な衛生状況に無い人の割合を半減させる(第7章)、2)2012年までに代表的なネットワークを含む海洋保全ネットワークを確立する(第31章)、賞賛できるのはそれだけだ。
 その他の部分で存在するコミットメントは単に再確認されただけであり、骨抜きの実効性の無いものだ。第5章(a)は「先進国に、GNPの0.7%をODAに振り向けるための具体的な努力をするように促す」と約束している。第19章(e)は「クリーン」な化石燃料を促進するという、気候変動に取組む京都議定書と全く矛盾するものである。(カナダとロシアによる批准の発表は歓迎できるが。)第22章は有害物質に関するものであり、ただ単に「2020年までに、人間の健康への深刻な影響を最小限にする方法で化学物質が生産されるようにする」となってしまった。第42項は「現在の生物多様性の減少速度を顕著に減速させる」という、国連生物多様性条約会議からの明らかな後退になってしまった。さらに、欺かれた言葉や失われた約束のリストはきりが無いほどある。客観的にどこからみても失敗である。
 FoEインターナショナル(FoEI)は、地球サミットを強く支持し、私たちの地球に対する環境面での脅威に取組む国際的な拘束力のある合意を強く求める。そのためには、メディアと市民社会に開かれた交渉が必要である。
 しかし、合意された実施計画は、世界が直面している問題の大きさを取り扱い始めたに過ぎない。これは世界の貧しく弱い立場の人々やコミュニティ、とりわけ貧困だけでなく環境の危機に直面している途上国に対する裏切りである。
 先進国やWTOなどの機関を支配している新自由経済主義がもたらす悪影響を阻止するための機会は、失敗に終わった。その代わりWTOとそのルールについて約200箇所の引用が行動計画に含まれている。多国間環境協定(MEA)をWTOルールに従属させるコミットメントを防止したという、NGOのキャンペーンの勝利も部分的なものでしかない。
 FoEによって達成されたその他の重要な成功は、南アフリカと他の政府代表との非公式会合の後、企業行動と責任に関しての国際的な合意を促進する文言が含まれたことだ。しかし、米国はこれらの文言を、アッシュ大使から出された「解釈に関するレター」による策略を通じ、弱体化させようとした。FoEIは今後、企業責任に関する国連会議を2003年末までに開催するように働きかける。この問題を扱うことを求めている南ア政府が作成した政治宣言案で提案された目標である。FoEIは企業責任に対するキャンペーンと、自由市場主義に対して環境保護と社会的連帯を優先させるためのキャンペーンを、カンクンのWTO会議に向けて行っていく。
 リカルド・ナバロ FoEI会長は次のようにコメントしている。
 「地球サミットは環境保護と貧困と社会的破壊に対する取り組みの場だったはずだ。中身が無く偽善的な9日間の後、環境を守り、貧困と搾取と闘うため得た重要な新目標は2つだけだ。
 経済が、規制し制御する政治機構の能力を超えてしまった世界、それは取りも直さず深刻な危機のもとにある。そして、このような世界は決して安全で平和にはなりえない。我々は世界が必要としている根本的な環境行動のために闘うことを決意する。」
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