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トピック
Vol.08(2 September 2002)
 
 
残されたエネルギー
 9月1日は午後から翌日4時まで各国閣僚とごく限られた政府交渉担当者のみの非公式交渉が続けられ、エネルギー、リプロダクティブヘルスを除くほぼすべての世界実施文書文面に合意した。エネルギーは無目標値、先進化石燃料技術移転を柱とした途上国案、それに再生可能エネルギー目標を加えたEUの2提案だが、日米イランによる調停案作りが進んでいる。エネルギーは目標値を持たないとする日米の姿勢により実施文書交渉最後までもつれこむこととなった。エネルギー部分の交渉は2日朝11時より再開される。
MEA vs WTO
 環境条約(MEA)とWTOに代表される貿易協定との優位性を決定するパラグラフの交渉が1日の閣僚会合で、最も大きな争点となった。この日の交渉の結果によっては、今後の環境条約交渉の内容が、WTOルールに合致することを示さなければならなくなるという意味で、極めて重要な話し合いであった。
 交渉は難航を極めた。しかし、ノルウェーが「WTOとの一貫性を確保し」というWTOに優位性を与えてしまう表現の削除を要求。そして、ツバルとエチオピアが印象的なスピーチを行ったことでG77が態度の転換をした。これにより、一旦合意されたパラグラフが再交渉となり、この表現は削除、合意に至った。
 NGOはMEAがWTOルールに従属してはならないと訴えてきた。この合意によって、最悪の事態は免れたといえるが、貿易の章全体を見ると、WTOに関する言及やドーハ宣言からの引用がちりばめられており、まるで貿易協定そのもののような文章にまとまってしまった。
企業責任の項目合意へ
 31日夜に出されたアッシュテキストで、企業責任の項目に大きな動きがでた。29日でのコンタクトグループではEU、G77、米国と3つの案が出された後、しばらく沈黙を保っていたが、急遽妥協案が出された。3案をあわせたといわれる文書がでたが、これはFoEが提案していた文面をほぼ取り入れたものであり、リオ原則への言及や、今後の企業責任に関する取り決めの発展に含みを持たせる文言を盛り込んでいた。
 しかし、日米が企業責任に関する国際的な制度作りにつながる文言に強く反対し続ける中、最終的に合意されたものは、注釈として「既存の制度への適用に限る」という文言が入ったことで、今後の企業責任への取り組みを制約するものとなった。
アートアクション : HEAR OUR VOICE
 9月初めの日曜日。サミット開始から一週間がたった。これまでのところ、持続可能な開発のためのサミットというのは名ばかりで、何ら新しい合意がなされないままとなっている。
 そんなどんよりとした交渉と対照的に、朝から青空が広がったこの日、FoEインターナショナルは、世界の人々に企業責任の必要性を訴えるアクションを、会議場のすぐ脇の広場で行った。「アートアクション:HEAR OUR VOICE」との名前のとおり、地元南アのアーティストの指導により、地元の貧しい層の人々の手による6000体もの人形が広場を覆い尽くした。古紙を使った手漉きの人形は、一体一体が異なる表情をしている。この人形達の真中に、くず鉄で作られた高さ6m、重さ6トンの巨人が仁王立ちをしている。地球を手玉にとっているこの巨人の名は「コーポレート・ジャイアント」。世界を席巻する巨大な多国籍企業を象徴したものだ。広場のあちこちから、巨大企業の影響をうけた人たちの悲痛な叫びが聞こえてくる。
 この人形を製作してくれた地元コミュニティから、ゴスペルの聖歌隊がやってくるはずだが、時間になっても来ていない。セキュリティゾーン入り口で、警察により入場を止められたようだ。事前に入場パスを取得済みのはずにもかかわらず。サミットには貧しい者は入るなということか。
 最終的には、入場を認められ、警察に付き添われて聖歌隊はやってきた。「声無き私たちの声を伝えられるこのような場を用意してくれて感謝します」。
 南アでは自由化・民営化が進み、貧しいコミュニティでは、電気が止められるなど、自由化に対する不満は極めて大きい。貧しい人たちの声を封じ込めたまま、豪華な建物の中で一部の人たちが、地球の将来を左右する協議をしている。パートナーシップを謳い、持続可能な開発のためのサミットのはずが、自国の経済を優先する先進国が自由化・グローバル化を推進しようと、さながら貿易交渉の様相を呈している。
 巨人の前で、楽しそうにゴスペルを唄う彼らの声は、会議場に集まった各国の代表に届くだろうか?
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