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トピック
Vol.01(24 August 2002)
 
 
ヨハネスブルグで目標に合意を!
ヨハネスブルグサミット開催目前!
1992年リオデジャネイロでの地球サミットから10年。その後の進捗状況を踏まえ、今後の地球環境と開発の政策の方向性を見直すために、8月26日から9月4日まで南アフリカのヨハネスブルグにおいて、持続可能な開発に関する世界サミット(WSSD)が開催される。

FoE(Friends of the Earth)インターナショナルは、これまで前向きな行動への合意がなかったこと、そして各国政府がリオでの協定から後退する危険を冒していると警告する。特にアメリカ、日本、オーストラリア、カナダ、OPEC諸国は、市民と地球のための国際的な合意の達成や新しい約束の誕生を妨害している。一方で、EUやG77はこうした国々に対抗する態度を取っている。EUとG77は、断固としてこの立場を堅持し、必要があればアメリカ抜きで前進するべきだ。そして、日本政府も具体的な数値目標を盛り込んだ実施文書が採択できるよう、前向きな態度を示すべきである。

これまでのヨハネスブルグサミットのプロセスの中で、各国政府は規制緩和や自由化に関する世界的懸念に対処するどころか、WTOの掲げる自由貿易の推進が持続可能な開発につながる策であるとしている。FoEインターナショナルは、企業に対する法的拘束力を持った世界的なルール作りを提唱している。しかし、これを支持する国際的な世論の高まりがあるにもかかわらず、各国政府は、環境破壊や人権の侵害などを引き起こしている企業に対しても、自主行動を促すことのみでとどまる可能性が高い。また、先進国が、発展途上世界に対して負っている環境債務を認める可能性も低いのが現状だ。

 10年前のリオサミットでは、様々な取り決めが合意に達したにもかかわらず、この10年間で世界の貧富の格差は大きくなり、地球環境は悪化の一途をたどった。ヨハネスブルグから次のステップへと進むための新しい具体的な目標と行動計画が、何ひとつ示されずにこの重要なサミットを終わらすことはできない。具体的な目標に合意し、こうした現状を打破しなければならない。


多国籍企業の規制を!
これまで、多国籍企業は自由貿易の拡大やグローバル化によって、貧困の拡大や環境破壊を引き起こし、住民の生活を脅かしてきた。持続可能ではない木材伐採、住民の立ち退きの強制、住民の健康を脅かす採掘事業、大規模な輸出農業による生態系破壊などがそうである。 
こうした企業は、効果的で国際的な法的拘束力のある規制がなかったため、利得のためにその資源を乱用してきた。そして、何世代もその土地で自然と調和して暮らしてきた人々の生活を奪っていったのである。

FoEインターナショナルはヨハネスブルグサミットで、多国籍企業の行動責任、補償責任、報告義務など法的拘束力ある規制を設けるよう求めている。これには、効果的な制裁措置、事前協議を受ける住民の権利の保障、企業の破壊活動に対する法的な異議申し立てや補償制度などが盛り込まれるべきである。
以下はポジションペーパーの要約部分である。その背景と詳しい説明を含む完全版は、ウェブサイトへ。

【要約】
本文書は、企業の行動責任と補償責任に関する、効果的で法的拘束力のある国際的枠組み、あるいは条約の事例を検証するものである。この条約には、以下のものが内包される必要がある。
1)影響を受ける市民やコミュニティーの法的な権利
2)社会そして環境に関する企業の責務
3)高い水準の行動規範を確保するための規則
本文書では、「他国籍企業のためのOECDガイドライン」などの自主行動を定めた文書の発展と、自主行動の本質的限界、そして拘束力と強制力のある枠組みの中でのそうしたイニシアティブに関して最良の規定を記述することを模索している。FoEインターナショナルは各国政府に対して、ヨハネスブルグサミットで企業責任条約のための交渉開始にコミットするよう働きかけている。


FoE's Actions !
政府は企業のため?それとも市民のため?

"Hear our Voice! Art Installation"
FoEインターナショナルは、世界15国以上でアクションを開催し世界の首脳に向けたメッセージを集めた。これらを"People's Voice"としてヨハネスブルグに届ける。 
9月1日11時に予定されているこのアクションイベントでは、南アフリカのアーティストがデザインした「大企業」を象徴する大きな人形をヨハネスブルグのサントン国際会議場に運び、世界中の市民から集められたメッセージとともに、各国政府に「大企業に世界を牛耳らせるな!」というメッセージを届ける。
FoE Japanも"市民の声をヨハネスブルグに!"と題して、国内でのキャンペーンを通じて、一人一人の写真とともにメッセージを集めた。届けていただいた一人一人の声は、WSSDグローバルフォーラム会場で展示し、市民の声として届けられる。

"radio earth summit"
FoEは、"radio earth summit"と題し、ウェブサイトを通じて、多国籍企業の野放図な活動によって悪影響を受けた人々の声も届けるアクションもおこなっている。詳しくはFoEJapanのウェブサイトへ。


エネルギー:具体的な目標の合意を!
 現在20億もの人々が貧困の中でエネルギーサービスへのアクセスを欠く状況に置かれている。世界が合意した国連ミレニアム宣言の中に記載されているように、2015年までに貧困を半減するという目標を達成するためにも、また気候変動問題の軽減のためにも、ヨハネスブルグサミットにおいて、再生可能エネルギーの具体的な導入目標に合意することが必要である。
気候変動問題に取り組む日本のNGO7団体は、国際的な環境NGOの呼びかけに答え、以下の目標導入に賛同した。

・2010年までに世界の一次エネルギー供給の10%を再生可能な自然エネルギーでまかなう。
・2015年までに貧困を半減するというミレニアム開発目標達成を進めるため、クリーンで手が届き供給が安定したエネルギーサービスへのアクセスを可能とするための行動計画を示し、WSSDから実施すること。

これには、以下の団体が賛同している。
[世界自然保護基金、グリーンピース、FoEインターナショナル、A SEED JAPAN、気候ネットワーク、環境エネルギー政策研究所、CASA 地球環境と大気汚染を考える全国市民会議] 詳しくはウェブサイトへ


米大統領サミット欠席:FoEが文書入手
ブッシュ米大統領がヨハネスブルグサミットを欠席する。代わりに、パウエル国務長官を代表団長として送り込んでくるが、これはアメリカが、貧困削減、環境問題の取り組みという大きな課題の2つを軽視していることの現れであろう。そして、同大統領の欠席はアメリカ産業界とのつながりの強さを象徴するものでもあるのだ。
FoEは、企業グループがブッシュ大統領へあてた書簡を入手した。これには、大統領のサミット欠席を歓迎し、米代表団が交渉においてさらに後ろ向きな態度をとることを要求する記述がある。こうした米政府と産業界の強いつながりは国際的な地球環境問題の取り組みにおいて大きな脅威となっている。
アメリカは京都議定書から離脱しているが、これはほんの一部にすぎない。ヨハネスブルグプロセスにおいて、多くの恥ずべき態度を取ってきた。
1992年のリオサミットでは、リオ宣言という文書が合意されたが、この中に含まれる「予防原則」や「共通だが差異のある責任」などは、地球環境問題などの解決には必要不可欠な要素であることはもはや触れる必要のない事実である。しかし、アメリカが推進を望んでいる人の健康に被害を及ぼす可能性のあるGMO(遺伝子組み換え作物)や化学物質などの輸出に関してこの予防原則を適応されるのを嫌うのである。なぜなら、予防原則の適応は、人々がこうした物質の危険にさらされる前に、害のないことを証明しなければならないことを意味し、アメリカ企業が貿易をおこなう際の障害となるからである。
「共通だが差異のある責任」は問題を引き起こした国が問題解決を率先しておこなうべきであるという共通の理念である。例えば、気候変動問題などはその通りで先進国の引き起こした問題で、途上国が被害を受けている。この原則を無視するということは、世界各国の協力が必要となる地球環境問題を解決するための取り組みを後退させることに直接つながる。アメリカやこの原則を拒否する国はこうした恥ずべき行動をとっているのだ。
アメリカは自由貿易・グローバル化を最も推進している国である。アメリカはWTOドーハ宣言の実施が貧困削減や環境問題解決の最善策であるとしているが、これまで野放図な多国籍企業などによるグローバル化がもたらした結果は、地球環境悪化と貧富格差の拡大であったことは明白である。自由貿易推進の名の下に、企業活動への規制を除去するということは、経済の進む方向性の転換をおこない、持続可能な発展への道を歩むということと正反対にあるものなのである。


WTOからMEA(多国間環境協定)を守れ!
世界中のNGO団体が5月のWSSD第4回準備会合の前に以下の声明に賛同し署名した。声明では、ヨハネスブルクでMEAの権利と独立性を再確認し、MEAがWTO規約に従属するものではないことを明確にするように政府に要求している。:
市民社会声明
WTO規定の策定にあたっては、MEAを重要視することがWSSDで合意されなければならない。国連加盟国は、MEAの権利と独立性を主張し、MEAがWTOに対して軽視されたり、従属するものにならないように、MEAとWTO規約の関係をヨハネスブルグで明確に定義する義務がある。今日では、約20のMEAが貿易関連の手段を採用しているが、カタールで開催された第4回WTO閣僚会議では、MEAとWTO規約の関係が不明確であったため、それらの関係に関する交渉に着手することを決定した。
2003年にメキシコで予定されている次のWTO閣僚会議で最初の結果が出ることになっており、ここで問題となるのは、世界的なガバナンス問題である。自然環境と人権を守るために、国際ガバナンス構造において、貴重かつ戦略的に重要な部分をMEAが担っているのである。MEAは、WTO規約に対抗するために、保護され、強化されていかなければならない。ヨハネスブルグサミットで、各国政府は次のことを行うべきである。
* MEAの権利と独立性を主張すること。
* MEAの目的、原則、条項がWTOの規約に従属しないことを明確にすること。
署名団体一覧はウェブを参照いただきたい。

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