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プレスリリース  サハリン2 環境問題は解決していない
 

2006年12月26日

プレスリリース

サハリン2
環境問題は解決していない
企業及び国は説明責任を果たすべきだ

「プーチン大統領の声明には非常にがっかりしている」「企業間の合意の中に、適切な環境修復・改善措置が含まれているのか」--。ロシア・サハリン島で過去10年間、サハリン2の環境社会問題を訴え続ける現地NGO「サハリン環境ウォッチ」代表ディミトリ・リシツィン氏(39)は25日、FoE Japanに対して重い心境を語った。プーチン大統領は21日、シェル・三井物産・三菱商事がサハリン2株式過半数の売却にガスプロムと合意した後、サハリン2の環境問題について「基本的な部分は解決した」*1と語った。

企業間の権益交渉妥結を受けて、環境問題を「解決」とするのは、極めて文脈を逸脱した、あるいは性急な言い回しだ。今年夏より3ヶ月に渡って同事業の環境違反状況を調査した天然資源省は、約600ページとされる調査報告書をまとめたばかりで、企業側にも一般にも未だ公開されていない。またサハリン州検察当局は今月7日に出したプレスリリースの中で、11月21〜27日に行なった調査の結果、森林違法伐採や7地域にまたがる水利用に関する法違反など、サハリン2は「環境法規を100以上違反・逸脱している」と声明を発表している*2

さらにサハリン州検察当局と同時期の11月後半に現地調査を行ったサハリン環境ウォッチは、サハリンエナジー社が天然資源省の指摘を受けて「工事を一時中止」したはずのもっとも土石流のひどい山岳地帯や河川で工事を継続していた事実を確認している。「交渉が行なわれていた間、解決した環境問題はない。サハリンエナジー社は違法に投棄された大量の土砂を適切な場所に移動すらしていない。サケの遡上する河川へのダメージは来年も続く。」*3

自国企業がサハリン2株式過半数を得たことをもって、「問題が解決」とするのであれば、プーチン大統領はロシア法の「軽さ」を自ら露呈したことになる。また、仮に企業がそれに乗じるのであれば、企業の法令遵守(コンプライアンス)などあると言えるのだろうか。今回、ロシア政府が環境問題を「口実」に同事業へのガスプロム参入交渉を有利に運んだという解釈が大半だが、日欧企業はなぜ、こうした圧力に抵抗することができなかったか。それは「ロシア政府が指摘する環境破壊、環境法規違反が実在していた」からである

今後、ロシア政府並びにガスプロムを含む企業4社は、サハリン2のロシア法並びに国際基準に則し、破壊された環境をどのように修復・改善してゆくのか、サハリンの住民や国際NGO、専門家らに明確に説明する責任がある。

また、サハリン2は事業化後には、油田開発の最大の環境リスクの一つが待ち受ける。油流出事故だ。サハリンエナジー社は第二期工事の油流出対応計画を未だ公表していない。リシツィン氏は11月に来日した際「油流出対応計画には、アニワ湾のサハリン沿岸以外の油流出未然防止策は含まれていないと聞いている」と語っている。

油流出の影響をもっとも受ける可能性のある隣国は日本である。サハリン2の一連の動きに対する日本政府の消極的姿勢は不気味ですらある。国家プロジェクトと位置づけるサハリン2の深刻な環境影響を招いた原因の一つには、日本の資源外交戦略に「環境配慮」という観点が機能的に含まれていなかったことが最大の欠陥とも言えるのではないか。日本の国際協力銀行は、環境問題を理由にサハリン2に対する数千億円規模の融資を3年半にわたって実施できずにいる。日本政府の説明責任も大きい。

「サハリン2の環境問題の解決には、長い道のりが待っている。ガスプロム、シェル、三井、三菱はサハリン2を環境社会に配慮した事業に転換する必要がある。我々は過去10年と同様に、その転換が現実に起こるように働きかけ続ける」とリシツィン氏は締めくくった。

*1 https://www.asahi.com/business/update/1222/091.html
  https://www.itar-tass.com/eng/level2.html?NewsID=11106727&PageNum=0
*2 https://www.sakhalin.info/news/40978/
  https://en.rian.ru/russia/20061206/56545808.html
*3 サハリン環境ウォッチ  https://www.sakhalin.environment.ru/en/index.php

* 同団体が続けてきたサハリン2環境社会影響のモニタリングの様子は、こちらからご覧いただけます。
  URL:https://www.foejapan.org/aid/jbic02/sakhalin/index.html

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