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サハリンIIフェ−ズ2プロジェクトに関する環境関連意見交換会 (2004年7月1日 東京)

日時:2004年7月1日 10:00〜12:00
場所:パレスサイドビル2F大会議室

〈EBRD〉
Mark King(Head, FI & Implementation Support,Environment Department)
Jeff Jeter(Senior Environmental Advisor, ,Environment Department)

〈JBIC〉
天川和彦(資源金融部第二班課長)、速川(資源金融部第二班調査役)、藤田豊明(総務部次長、広報室長)

<会合の概要>

【EBRD】
・ 4行で情報を共有し、同一の立場で行動する。
・ SEICから出されたEIAについて、追加的な情報を求めていく。適宜公開していく。
・ 満足できる状態になるまで、融資はしない。
・ 事業の進行はロシアの許可済。問題は4行が融資機関として関与するか否か。
・ 外部の専門家による調査、外部からの情報提供は重要。
・ コククジラの追加的調査については、現在専門家がレビューを行っている。
・ 今後も日本の専門家からの様々な情報提供を期待したい。

【JBIC】
・ 上に同じ。
・ ガイドラインの対象案件ではないが、できる限り取り入れるよう努力していく。
・ 協議会を設置する予定。詳細は追ってホームページで案内する。
・ JBIC独自に専門家を雇って調査している。
・ 追加的な環境・社会情報については、日本語での情報公開を検討している。
・ 日本のステイクホルダーと適切なコンサルテーションを行うように事業者と話をしている。

【参加者からの意見】
・透明なプロセスで議論ができる専門家の委員会を設けるべき。
・ 油汚染―油流出事故の際の対応を明確にしてほしい。防除策を漁民に伝えてほしい。油流出のシナリオを正確に調査してほしい。
・ 希少種―追加的な調査必要。累積的な影響を考慮すべき。
・ EIAを適切に行うまで事業を進めるべきではない。事業が進行するにつれ、環境対策が難しくなる。銀行は、これ以上工事を進めないよう事業者に話をすべき。
・ SEICは日本のステイクホルダーと適切なコンサルテーションを行うべき。
・ 重要な環境・社会情報は日本語で公開されるべき。
・ 日本側で暴風時の油流出の大事故に対応できる体制が整っていない。


<会議録>

■ 今回の意見交換会の進め方

JBIC 天川:公式な記録を残すのではなく、それぞれが記録をとる。ここで何か合意をする、というつもりはない。


FoE J 松本:環境審査の現状は?

JBIC 天川:6月22日から、EBRD・JBIC・US-EXIM・ECGDの4行でサハリンで環境レビューを行った。環境審査にマイルストーンはないので、はっきりとは言えないが、審査の段階としては、この意見交換会で聞いた意見を審査に活かしていける段階。

松本:これまでにも懸念を伝えてきたが、それらを踏まえたこれまでの対応、および今後の対応は?

JBIC 天川:もらった情報はSEICに伝えている。実際に対応するのはSEIC側だ。

EBRD King:4行は環境問題について緊密に連携し、すべての情報を共有している。SEICからのEIAは、独立したコンサルタントに審査を依頼している。SEICにも懸念を伝えてあり、詳細なデータを求め、今後さらに調査する。環境アクションプランなどが作成され、融資機関として満足できるものにならない限り、融資の決定を進めることはできない。現場では融資機関の対応に関係なく工事が進んでいる。国(ロシア)の許可がすでに出ているので、事業を進める進めないの問題ではない。問題は融資機関が関与するか否かにある。


海洋工学研究所 佐尾:4行の情報共有、同じ立場・考え方というのは本当か?

JBIC 天川:4行で事前に協議した上で、SEICに対して行動をとる、という意味で本当だ。JBICに意見を言えば4行に伝わる仕組みだ。

佐尾:「マイルストーン」がないというのは心外。これまで公式に意見を聞く場もなかった。どのようにステークホルダーの意見を取り入れていくのか、専門家の検討委員会を設けるなど、今後どういう手続きをとるのか示してほしい。

JBIC 天川:「マイルストーンがない」というのは、段階がクリアでなく、動態的であるという意味だ。EIAは広報室の情報公開センターやホームページで公開している。4行で外部の専門家を雇って情報提供を求めている。

EBRD King:情報公開・一般の人々とのディスカッションはEBRDの政策でもある。非公式、公式に関わらず、いつでも情報を受けつける体制が大事。情報は適切な時期に公開していく。

佐尾:4行で同一の立場といっても、日本に特有の問題もあるため、イギリスの銀行は日本の状況を的確に把握できないのではないか?

JBIC 天川:日本は4行とは別に独自に日本の専門家に相談している。


松本:質問が二つある。現状で、SEICの対応に満足しているか?また、事業は進行中というが、それにより環境対策やベースライン調査ができなくなり、銀行の環境基準も満たさなくなると思われるがどう思うか。

EBRD King:現在公開されているEIAは不十分なので、詳細な情報の提示を求めている。回答はまだ。金融機関としての懸念は伝えてあり、SEICが対応しなければ融資はできない。 また、事業が進行中であっても、セーフガードは可能だ。油もれ、地震対策などは事業進行中でも改善の余地はある。パイプラインの敷設もまだ河川の横断はしていない。活断層への対応も協議している。


立正大学地球環境科学部環境システム学科 後藤:北海道の漁民に対する油流出時の被害想定について聞かせてほしい。ステイクホルダーである漁業者や市民の意見を聞いて対応を検討する協議会が必要では。エクソンバルディーズではCook Inlet Regional Council等、このような協議会ができていたと承知しているがどう考えるか。

JBIC 天川:油漏れへの対応は、データの提供を受けつつ審査中。流出予防対策は、フェーズTですでに策定されている。フェーズUで特に必要となる防護策をSEICが策定中。これにJBICも関与していく。

JBIC 速川:札幌での意見交換会ではオホーツク周辺の漁連の方々が参加。事故は起きないというのではなく、事故が起きたときの対応を前もって考えておいてほしいという意見がでた。

佐尾:オオワシ問題のように日露が同じ立場で見られる場合と、油事故のように日露の立場が違う(被害者・加害者として)場合がある。後者は対応が難しい。二つの異なった立場が協力しないと、油の事故は防げない。漁民に対して防御策が知らされていない。JBICの環境ガイドラインには、EIA作成前のステイクホルダーとの協議や専門委員会の設置などが規定されているが、現状は不充分。専門家の委員会を設けることが必要。

JBIC 天川:EIA作成はSEICがやることで、JBICではない。

JBIC 藤田:サハリンUフェーズ2は昨年5月からのもので、昨年10月から施行されたガイドラインの案件ではないから、ステークホルダーとの協議なしでEIAを作ることも可能だった。対象案件ではないが、意見を考慮せずに融資を進めてはいけないと考えるので、ガイドラインに出来るだけ対応するよう努力していく。SEIC によるEIAや地元とのコンサルテーションが不十分だと指摘されているが、意見を受けながら改善を求めていく。委員会の設置についてだが、専門家や各省庁、当事者を集めて協議会という形で検討したい。構成を国内のみとするか国外も含むかは未定。本来なら実施主体がやるべきことなので、SEICにも了解をもらう。またはSEICを協議会に呼ぶ。我々が融資しなくても、他の金融機関がある。公的金融機関という立場を利用して、事業者にできることがある。

松本:協議会はぜひ透明な形で行ってほしい。

日本湿地ネットワーク 柏木実:ハマシギのサハリン固有亜種やカラフトアオアシシギなどシギ・チドリ類の希少種への対応について懸念している。環境影響評価書には調査結果はあるものの、対策が書かれていない。ちゃんとした調査をした上で事業を進めるべきだと4行からSEICへ勧告すべきだ。このままでは環境対策がなおざりになりかねない。6月に山階鳥類研究所の茂田良光研究員がサハリン北東部の調査を行い、ハマシギの営巣を確認している。

EBRD King:ハマシギについてSEICに追加情報を求めている。このような情報は重要だ。専門家からの情報を得ることでEIAと突き合わせて審査することができる。今後の環境モニタリングに際しても、ぜひアドバイスしてほしい。

JBIC 天川:ハマシギについて懸念している。情報提供してほしい。この場で終わりということではない。

松本:モニタリングの情報も大事だが、ベースラインデータの共有がなければ、情報提供・意見交換ができない。

EBRD King:今は情報を収集している段階。EIAに追加する形で適宜公開していく。


柏木実:日本湿地ネットワークや山階鳥類研究所は自費で調査を行っている。個人の調査に頼るのではなく、金融機関独自で調査することはないのか?

JBIC 天川:これまで4行共同で現地へ2回、専門家をともなって調査にいっている。今後も続けていく方針。

EBRD King:調査はまず事業主体がやるべきこと。それを金融機関が審査する。SEICから追加の情報が出てから、今後の対応を考える。本来なら融資機関がお金を出すものではない。

JBIC 藤田:環境配慮はプロジェクトの実施主体に求めるというのがガイドラインの精神。金融機関は独自に調査するのではなく、事業者の調査結果をもとに審査を行なう。審査の方法として、外部の専門家に同行してもらい、審査することもある。


後藤:現在のアセスメントの結果で、油流出事故の際に洋上回収を前提とし、北海道には被害がないという想定は、専門家によって議論されているのか。日本の油防除体制が事故時に稼動すれば問題ないが、日本は総合的な油防除の対策システムが整っていないので心配である。責任の範囲を明確にすることが必要。

EBRD Jeff:油流出事故のシナリオについてはまだ精査が必要。万が一の場合の対策として、油流出対策の専門会社との契約を考えている。日本領域で油流出がおきた場合にロシア船舶が容易に日本領海に入って対応できるようにしておくことが必要だ。飛行機で編むら回収のための機材を運ぶ際の通関を簡単にする必要もある。

JBIC 天川:油流出のモデリングは日本の専門家にも審査してもらっている。


写真家 土岐帆:将来の世代や野生生物など、ステークホルダーであるがこの会に参加できない人たちがいる。彼らの立場で物を見る必要がある。事故が起こらなくても環境への影響は多大である。将来の世代に対する責任を果たしてほしい。アラスカのArctic Refugeの開発に疑問を持ちながら取材を続けている。Arctic Refugeは幸いにして多くの市民からの意見が上がり、開発の進行が遅れている。サハリン開発に関する計画段階での報道は日本では少なく、アメリカのメディアから入手していた。アメリカのメディアは、サハリン開発はArctic Refugeのはけ口である、と報道している。開発が企業の利益のためか、それとも本当にエネルギー開発が必要なのかを見極めてほしい。化石エネルギーへの依存から脱却するべき。EIAの妥当性を審査する方法が不充分だ。

JBIC 天川:事業者の利益のために融資するのではない。日本や日本の資源にとっての利益を考えている。EIAの妥当性に関しては新たな情報提供を集めて、審査をしている段階。


松本:追加的調査に関して、日本語で情報提供をしてほしい。また、これまでのSEICとの協議のプロセスに対し、「協議会が行なわれてもその中身が反映されない」、「協議会の開催告知が直前に行なわれる」「一部の人にしか協議会の案内が送付されていない」などの不満をもっている。今後、適切なプロセスが取られるようにして欲しい。また、野生生物の追加調査が必要だ。コククジラについてEBRD・US-EXIMで独自に調査するという情報があったが本当か。コククジラ以外についても融資期間の独自の調査をしてほしい。

EBRD King:2行だけでの独自調査ではない。コククジラについてSEICから出された追加的な調査について専門家の審査を求めている。

JBIC 天川:調査報告の日本語での開示について、概要か全文かは未定だが、開示するよう話を進める。コンサルテーションや情報開示の方法については、SEICと話をしている。コククジラは保護計画をつくる予定。他の希少種についても保護計画を作るか否かを含め、今後検討していく。


海上災害防止センター 佐々木邦昭:オホーツクの人々は流氷と同じように油も沿岸に流れてくることを恐れている。日本のこうした問題に対策ができる組織と協力していくべきだ。海上災害防止センターではSEICと協定を結び、事故対策に対処できるようにしている。

佐尾:今日本にある防除策では、暴風時の大事故には対処できない。ステークホルダーの立場は様々で、どれだけ多くの人に納得してもらえるかが課題。こうした様々な立場の人の調整がとれないと問題解決はできない。委員会を作ることによってこうした意見やデータの調整を行うことができる。こうした委員会がどのようなものになるのか、JBICから本日の参加者に近日中に回答をいただきたい。

JBIC:委員会設置には政府との調整も必要。参加者の範囲、扱う問題の範囲などを検討した上で、ホームページ上でどのような形で行うかの報告をする。

松本:環境ガイドライン策定時のように透明なプロセスでお願いしたい。さまざまな問題が関連するので、個別問題ごとではなく全般的な協議の場を設けてほしい。


日本雁を保護する会 竹下信雄:
SEICという会社は信用できない。これまで、オオワシの生息数を改ざんしたり、コンサルテーションの公開やメディアの参加、公式記録を残すことを拒否したりしている。SEICへの慎重な対応が必要だ。


日本野鳥の会 古南幸弘:
ハマシギのサハリン固有亜種、オオワシ、カラフトアオアシシギなどの希少種への影響を非常に懸念している。これらの種の保護については、昨年行われた日露渡り鳥等保護研究会議でも話題に上がった。特にオオワシは鉛中毒や、渡りルートにおける風力発電施設建設計画などの問題でも個体数の減少が進み、あるいは心配されている。希少種に対する累積的な影響を考慮してほしい。また、サハリンにおける複数の開発行為による累積的な環境影響も評価して欲しい。こうした状況に配慮せず、工事が進められていることを聞いて大変驚いた。回復不能な工事が進むと実行可能な環境対策の選択肢の幅が小さくなってしまう。迅速な対応を求めたい。

松本:事業が進行すると環境対策ができなくなる。金融機関として環境基準に合致しなくなるので困る、これ以上工事を進めないようにということをSEICに言ってほしい。


以上

(文責:FoE Japan 篠原、村上、松本)

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