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サハリンU 液化天然ガス(LNG)購買に関し 電力・ガス会社に対し要請書提出
2003年1月23日

サハリンU石油・天然ガス開発事業
液化天然ガス(LNG)購買に関し 電力・ガス会社に対し要請書提出
ご報告とお礼


 ロシア、サハリン島で進行中のサハリンU石油・天然ガス開発事業で生産予定(2006年)の液化天然ガスを購買する可能性のある13企業に対し、1月22日、23日に要請書を提出いたしました。この要請書は、電力・ガス会社に対し、サハリンU開発に関する懸念点・問題点を伝え、これらが解決・改善されない間は購買を控えていただくよう要請するもので、20団体114人の方々の賛同をいただきました。賛同をくださった皆さまにお礼を申し上げます。ありがとうございました。

 *提出企業:北海道電力/東北電力/東京電力/中部電力/北陸電力/関西電力/中国電力/
         九州電力/北海道ガス/東京ガス/東邦ガス/大阪ガス/西部ガス

 日ごろよりFoEと協力関係にある団体の協力を得て、北海道・東京・大阪・福岡それぞれの地域で持参による提出を予定しておりました。22日にFoEが東京電力、東京ガスに持参し、23日には北海道の市民団体エトピリカが北海道電力に持参してくださいました。関西電力・大阪ガス・九州電力からは持参を断られ、郵送でお願いしたいとのご返事をいただき、その他の7社と共に郵送で提出いたしました。お会いした会社の方には、サハリンII開発の問題点と要請書の主旨をお話し致しました。提出企業には、この件で引き続き連絡を取りたいと考えています。

 FoEは、主に日本政府からの融資によって海外で行われる、開発事業の問題を解決・改善に向けるために取り組みを行っています。日本政府はサハリンIIだけでなく、サハリンI開発にも多額の融資を行っています。サハリン開発は、私たち日本の市民への重要なエネルギー供給源となることが見込まれています。開発の問題だけでなく、エネルギーの面、経済面、政治面などが本当に複雑に絡み合っています。開発事業だけが先行し、環境面への配慮や社会面への配慮、あるいは問題の解決・改善が後回しにならないよう、私たちに何ができるかを考えながら活動をしています。

 サハリンの開発に関する情報はFoEのウェブサイトでも掲載していきますので、皆さまも引き続きご関心をお寄せいただき、ご協力いただけますと幸いに存じます。


◆サハリンU石油・天然ガス開発の概要◆

 日本のエネルギー資源確保のため、注目されているロシア、サハリン島で進行中の事業のひとつ。日本企業(三井物産、三菱商事)の関わりのもと、サハリンエナジー投資会社(SEIC)が設立されて進められている。日本政府機関である国際協力銀行(旧日本輸出入銀行)が第1期工事に116百万ドルを融資するなど、日本ととても関わりの深い事業。

現在、掘削プラットフォームの増設、サハリン島を縦断する約800kmの石油・天然ガスパイプライン、天然ガス液化処理施設建設を含む第2期工事に向けて準備段階。LNG購買の有力な候補は日本企業であり、3月までに購買契約が締結される可能性がある。


◆同事業への懸念・問題◆

気象の激しいオホーツク海や宗谷海峡を通過する原油輸送タンカーが事故を起こした場合の対応策や予防策がなく、北海道の市民団体や漁業関係者の間からは不安の声が上げられている。タンカー航海のモニタリングや、航海ルートの設定などの対策が早期に望まれている。また、サハリンU石油・天然ガスの開発地帯であるルンスキー湾からピルトゥン湾の沿岸部にかけて、約100のオオワシの巣が確認されており、生息個体の半数以上が冬に北海道に渡ってきていることが証明されている。オオワシ保護関係者は、このままではオオワシの貴重な繁殖環境が破壊されかねない、と大変な危機感を抱いている。更に、同事業では掘削汚泥の30%から60%が海底に再注入されず海洋投棄されており、これらが海洋生態系に与える影響などが懸念されており、さらに掘削地帯はIUCN(国際自然保護連合)のレッドデータブックにも登録されているコククジラへの影響も懸念されている。


*詳細は、要請書をご覧ください。

【以下、ガス・電力会社への要請文】

2003年1月   
             電力(ガス)
取締役会長               殿
取締役社長               殿

 
サハリンU石油・天然ガス開発事業による
液化天然ガス(LNG)購買契約について


 私どもは、この度貴社におかれまして「サハリンU石油・天然ガス開発事業」により採掘される天然ガスを購買される可能性があるとの情報を入手し、このような要請文を送ることに致しました。私どもは、同事業に数多くの環境社会問題があると認識しており、それらを改善すべく1998年以降取り組みを行ってまいりました。

サハリンII石油・天然ガス開発事業は、第1期工事を終了し、1999年からタンカーでの原油輸送が開始されています。そして現在第2期工事の融資について、各国際機関で検討が始められようとしているところです。国際NGOは、以下の点に関して問題解決や改善がなされないままに、第2期工事に入ることがないよう事業者であるサハリンエナジー(SEIC)や各融資機関への働きかけを行っております。米紙のWall Street Journalでは、サハリン島における石油・天然ガス開発の問 題点が一面記事として取り上げられ、大きな反響を巻き起こしています。

私どもは以下に挙げておりますような数々の環境社会問題が解決されていない現段階において、貴社がサハリンII事業のLNG購買を検討・契約締結をされることには大きな懸念を表明いたします。SEIC(シェル、三井物産、三菱商事)が下記の問題点を解決しない限り、貴社はガス購買契約を締結されないようお願いする所存です。サハリンII事業に関しては環境的、社会的、財政的問題が非常に大きく、貴社がサハリンII事業のガスを購買されることは、大きなリスクを伴うと考えます。私どもは、日本企業が公然と、このような無責任で問題のある事業に関わることが賢明だとは思いません。

●タンカー事故による原油流出事故防御策および対応策の不十分さ

アラスカやシェットランドの独立専門家が1999年、78項目の勧告を含めた報告書「サハリン石油−正しい対応のために」を発行しました。これには、安全なタンカー航海ルートの設定要求やタンカー交通のモニタリングの向上、タンカー航海域における漁船への通告などの点が含まれています。しかしこれらに対して事業者であるサハリンエナジー(SEIC)は未だ具体的対策をとっていません。第2期工事のもと、タンカーの往来が増え、事故が起これば北海道やサハリン島には取り返しのつかない被害が及ぶことが予想されます。

●海洋生態系への影響および事業主体者であるSEICの対応

サハリンII事業の工事着工以降、オホーツク海での漁獲高は激減しています。ま た、1999年にピルトゥン湾でニシンが大量死した原因について、SEICは掘削開始の1ヶ月前であったこと、研究所の調査によると、酸素の欠乏による死であったことを理由に責任回避をおこなっています。しかし、NGOが専門家に依頼した調査によるとタラの死骸から原油が検出されました。NGOと専門家は更にこの原油の成分を分析するため、SEICに原油のサンプル提供を依頼しましたが、SEICは契約を交わしている研究所以外には提供できないと拒否しました。大量死の原因に ついては、現在も明確な原因が分からないままです。また、オホーツク海にはコククジラなど11種の絶滅機種を含む25種の哺乳動物が生息しており、これらに甚大な影響を及ぼしています。

●掘削汚泥の海洋投棄および海上掘削施設からのガス排出

現在、SEICは掘削汚泥の40〜70%のみを海底に再注入しています。残りは海洋に 投棄されています。NGOは1999年以来、100%再注入するよう申し入れていますが、対策はとられていません。このような廃棄物の投棄はロシア連邦水典法では認められていません。また、海上掘削施設からはガスが排出されており、これらは国際的な「ゼロ排出」基準からははずれたものです。

●オオワシなど絶滅危惧種を含む動植物への影響

サハリン島は数々の希少動物の生息地となっています。特に掘削地周辺の湾岸地帯はオオワシの貴重な営巣地となっています。この地で生息するオオワシの約半数は北海道を越冬地としています。これらの生態の適切な調査および影響緩和策が取られる必要があります。

●パイプライン敷設による環境影響

第2期工事で計画されている800kmもの陸上パイプラインは約1000もの川を横断することになります。サハリンの重要な資源である鮭が遡上する川も多く流れています。これらの川の水質汚濁や生態系への影響が懸念されています。また、パイプラインが先住民族の伝統的土地を通ることによる影響も懸念されています。

●第2期工事に向けての市民公聴会の現状

SEICは第2期工事開始に向けて、地域住民を対象に公聴会を開催しています。しかしこの公聴会は地域住民の懸念について協議されるものではなく、事業者からの「説明会」のようなものでした。これに対し、サハリンのNGOが中心に開催した公聴会では、市民、地方政府関係者、学識者、NGOを含め100人以上が参加し約5時間に渡って協議が行われました。SEICは、法的拘束力がないことを理由に、この公聴会への出席を拒否しました。SEICのこの対応からは、地元の懸念に応えようとする前向きな姿勢は感じられません。

●社会経済問題

サハリンII事業は、サハリン島地域経済の活性に貢献していません。ロシア連邦政府会計監査機関が2000年〜2001年の調査の中で、ロシア連邦やサハリン州政府が公正に事業収入を受け取れないことを示しました。不平等な生産分与協定によって、SEICは、ロシア政府に払うべき資源利用のための費用を免除されています。更にサハリン島の市民は事業によって、自らの資源を有効に活用することができません。

以上、ご検討よろしくお願い申し上げます。ご回答お待ち申し上げております。

敬具

添付資料:・米紙 Wall Street Journal記事
       ・米紙 New York Times 記事
       ・サハリン環境ウォッチ主催公聴会の報告
       ・サハリンI、サハリンIIに関する環境NGOからの共通要求(12月中旬提出)

以下、賛同団体・個人記載
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