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緊急報告:危機に立つ生物多様性 「天国に一番近い島」で今何が? (09/6/3セミナー報告)

ニューカレドニア南部で進行する大規模なニッケル開発事業を事例に、私たち日本との関わり、現場の生物多様性および先住民族の方々の置かれた状況、融資のルールと生物多様性について報告を行いました。

多くの方々にご参加いただき、資源を海外に多く依存している日本として、鉱物資源開発に伴う生物多様性への影響にどのように向き合えばよいのか、活発な意見交換を行うことができました。以下、その概要を紹介します。

イントロダクション 〜ニッケル開発と私たちのくらし―日本人として直視すべきこと (清水規子/FoE Japan)
【特別報告】生物多様性の危機:ニューカレドニアからの報告  (谷口正次/資源環境ジャーナリスト)
融資のルールで生物多様性は守れるか (満田夏花/地球・人間環境フォーラム)


イントロダクション  〜ニッケル開発と私たちのくらし―日本人として直視すべきこと
清水規子/FoE Japan

最初にFoE Japan清水が、事業の概要と日本との関わりについて説明を行った。

●FoE Japanと事業との関わり  
2004年に日本企業(住友金属鉱山と三井物産)が事業への参画を決定。2005年以降、ニューカレドニアのNGOなどが来日し、事業の環境影響に対する懸念について、企業、JBIC等と会合を持ち、FoE Japan も現地調査を行う。

2009年1月には、JBICが融資を検討しているとの情報が公表された。FoE Japan としては、これまでの先住民族からの懸念を受け、事業がJBIC環境社会配慮ガイドラインを踏まえているのかを確認するため、2009年4月に再び現地を訪問。政府環境局や企業、先住民族議会など様々なステイクホルダーと会合を持った。

●事業概要と経緯  
ニューカレドニア本島の最南端、南部ゴロ・プロニー地区に事業地がある。資本構成の21%は日本企業。
採掘されたニッケルは大量の硫酸を利用して製錬される。その生産過程で大量に発生する廃棄物の廃棄場所がテーリングダム。ニッケル抽出の際に大量の水を使う。リサイクルする水も多いが、処理後パイプで海に排水する量も少なくない。


ニッケル開発の現場(精錬所)

ニューカレドニア(事業地域)の海岸

 

事業は2002年に建設を開始したが、過剰支出のため中止に追い込まれた。2009年には段階的に生産を開始する予定だったが、4月に硫酸流出事故がありその後は80%の操業中止中である。

事業はスムーズに進んできたわけではない。現地での反対運動をはじめ、カナダのInco社を訪問しての反対表明、道路封鎖と事業者による訴訟、工事差し止め判決など直接闘争だけでなく法廷闘争も含め、現地の根強い反対があった。2008年の先住民族との協定締結前にも直接行動があった。反対運動の中、事業が進んできた。

●日本人とニッケル  
ニッケルは非常に身近な金属で、特に戦後はステンレス工業の発展に伴い需要が増大してきた。ニューカレドニアは世界第2位の埋蔵量を持ち、生産量は世界5位。日本の消費量は、世界第2位。日本のニッケル輸入量のうち1割がニューカレドニアから来ている。  

事業地は非常に自然豊かで、先住民族が暮らしている場所でもある。私たちの暮らしが海外で現地の人に迷惑をかけている可能性がある。資源開発は総合的な取り組みが必要で、政府の政策、融資機関、企業、NGOや市民の暮らしも考える必要がある。今日は特に事業に対する融資機関の責任に焦点を当てて話しを進める。

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【特別報告】生物多様性の危機:ニューカレドニアからの報告
谷口正次/資源環境ジャーナリスト

続いて、資源環境ジャーナリストの谷口正次さんが、3度にわたるゴロ・ニッケル鉱山の現地取材を踏まえ、事業が生物多様性や先住民族の暮らしに与える影響について報告した。

●ニューカレドニアの環境・生態系の特異性  
ニューカレドニアは、地質学的に特異な場所である。2億年位前にゴンドワナ大陸が大陸移動した時にオーストラリアの一部が離れ一度水没して隆起して新しく生物が生まれて進化してきた。そのためこの島にしかない固有種が80~90%と非常に多く、世界自然遺産に指定されたラグーン(礁湖)や海洋生態系特別保護区もある。

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融資のルールで生物多様性は守れるか
満田夏花/地球・人間環境フォーラム

地球・人間環境フォーラムの満田夏花さんは、国際金融機関の環境に関する融資基準の中で、生物多様性はどのように位置づけられているのか、また、ニューカレドニア・ゴロニッケル事業は、これらの融資基準をクリアするかについて発表を行った。

●国際金融機関、民間銀行等の融資基準  
世界銀行グループは自然生息地や生物多様性に関する多くのガイドラインを有しているが、ここでは生息地の転換に関する基準に着目して紹介したい。

世界銀行は、多岐にわたる環境社会配慮の政策の中で、OP4.04「自然生息地」の中で生物多様性に深く関連する規定を有している。この中で、「重要な自然生息地の著しい転換または劣化を伴うと判断される事業には、支援をしない(OP4.04パラ4)」と規定し、「重要な」「著しい転換」をそれぞれ定義している。  

民間企業に融資を行っているIFC(国際金融公社)は、融資先の顧客に求める環境社会配慮基準であるパーフォーマンス・スタンダードの中で、生物多様性の保護と保全、重要な生息環境、外来侵入種などについて規定している。その中で、「顧客は、重要な生息地では、以下の要求事項を満たさない限りいかなる事業活動も実行してはならない」とし、例外として、「重要な生息地の能力に対する負の影響が予測されない場合」などとしている。

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