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現地グループが国際協力銀行にレター提出 「慎重な融資の検討を」  (2003.07.24)
2003年7月24日


PEOPLES CAMPAIGN AGAINST THE MINDANAO COAL-FIRED POWER PLANT
(People's Camp)
ミンダナオ石炭火力発電所の建設に反対する住民運動


国際協力銀行
総裁 篠沢恭助殿

前略

 私たちはミサミス・オリエンタル州ヴィラヌエバ町のミンダナオ石炭火力発電所の建設計画に連携して反対している様々なセクターのリーダー、代表としてこの手紙を貴行に宛てています。私たちのグループは、何百人ものメンバーをもつフィリピン国内の市民団体・宗教団体で構成されており、ミンダナオ石炭火力発電所の建設に反対する住民運動(People's Campaign Against the Mindanao coal-fired thermal power Plant:People's CAMP)と言います。

 私たちはこの事業への反対の意を公式に伝えるために、貴行に手紙を書いています。というのも、現在すでに、この3億米ドルの事業への事業者からの融資申請を受けて、貴行が評価のプロセスに入っているためです。

 同事業への反対の声は現地のみにとどまらず、全国レベルでの注目や支援も集まっています。すなわち、同事業への環境適合証明書(ECC)の承認という結果に対し、いくつかの調査が呼びかけられています。

環境適合証明書の問題:社会的合意の欠如と確実に起こる環境・健康被害

 同事業への反対の声は地元だけにとどまらず、全国レベルにまで及んでいます。

 フィリピン上院では現在、同事業へのECCの発行に関する調査を行なっています。Aquilino Pimentel上院議員が提出した決議文第470号です(別添参照)。

「A RESOLUTION CALLING FOR AN INQUIRY IN AID OF LEGISLATION INTO REPORTS THAT THE CONSTRUCTION OF A 210-MW COAL-FIRED THERMAL POWER PLANT IN VILLANUEVA, MISAMIS ORIENTAL WILL BE GRANTED AN ECC.」
(Attached is a copy of the Senate Resolution no. 470)  Pimentel上院議員に最近照会したところ、上院の環境委員会が行なっているこの調査は継続中であることが明らかになっています。

 他方で、私たちPeople's CAMPは、同事業への環境適合証明書の、特に社会的合意の面で疑問を抱いていることを強く主張してきました。

 同事業の社会的合意を証明する根拠とされている調査に関して、私たちは(これまでに)入手できた情報から、その調査が十分なものでなく、決定的なものでもないと結論付けています。

 私たちが社会的合意の根拠が十分ではなく、決定的なものでないと言うのは、調査に関して、以下のような問題点があげられるからです。(1)石炭を燃やす悪影響、特に健康や環境面における悪影響について評価していないこと、(2)石炭を燃やすことによって起こる公害汚染は、水銀のように、何百キロメートル先にも及ぶものであるのに、事業地近くの非常に狭い地域に限定されていること、(3)PHIVIDEC工業指定地域内にある事業地近くに住む人々は、事業への反対の意を表した場合、立ち退きに際して補償しないと脅かされているため、事実上、事業に反対しないよう強要されていること、(4)タスク・フォース・マカハラーのように以前から事業への反対を主張してきたNGOやその他の市民社会グループは、協議に関与していなかったこと。

 同工業指定地域の武装したガードマンによる嫌がらせは通常のことです。去る2003年6月27日にも、(工業指定地域を)移動しているこのガードマン達は、グリーンピース東南アジアやFoE Japanのスタッフに同行していた私たちのグループに対し、嫌がらせをしようとしてきました。

 PHIVIDEC工業指定地域はマルコス独裁政権の下での産物です。

 社会的合意を証明することは、環境影響報告書(EIS)で求められることの一部です。そして、EISは環境適合証明書(ECC)発行の前に求められる必要条件です。

 私たちは環境天然資源省(DENR)や国家経済開発庁(NEDA)から同事業のEISを入手しようと試んできました。しかし、私たちはよく見られる官僚的なたらい回しに遭いました。

 私たちは石炭火力発電事業に対するJBICの環境チェックリストをレビューし、同事業がチェックリストの幾つかの項目を実際に満たしていないことを発見しました。問題のあるものについては、下の表に記載しています。

(注:私たちはNGOや被影響地域における他の市民団体が協議を受けていない点についても、この表に含めました。)
1.許認可・説明
  コメント
(1)EIAおよび環境許認可   EIAはフィリピン法の下では環境適合証明書の発行における前提条件とされており、事業者はEIAを行なったと報告されている。

しかし、EIAの内容に関する公開の説明会は一切開かれていない。また、環境省や国家経済開発庁のような関連政府機関に再三要請したにもかかわらず、反対派に公開されているのはECCのみである。

一般市民に向けた情報普及キャンペーンも行なわれていない。
2.汚染対策  
(1)大気質   事業者は排煙脱硫装置を取り付けると言っているが、石炭が燃やされる際に発生する水銀、鉛、ヒ素、その他の軽金属といった他の微粒子に関しては沈黙のままだ。グリーンピースと英Exeter大学が最近行なったフィリピン国内の既存の石炭火力発電所に関する調査では、廃物中にこれらの微粒子が高い濃度で含まれていることが明らかにされている。
(2)水質   廃水が流れていく先、つまり、沿岸の漁場であるマカハラー湾への影響が明らかにされていない。発電所のボイラーや冷却装置用に使用される水は近くのタゴロアン川から引かれることになっているが、その導水による河川生態系への影響は確定されていない。
(3)廃棄物   排煙脱硫装置から出る副産物を事業者がどのように処理するのか、明らかでない。また、石油や化学廃棄物といったその他の廃棄物をどのように処理するのかも明らかでない。
3.自然環境  
(1)保護区   事業地の沖合い数キロメートル(約3キロメートル)、Jasaan町(Villanueva町のすぐ隣)の近くに、海洋保護地域、すなわち、Agutayan環礁の魚類保護区とされている区域がある。この区域は町の管理する水域で、ミンダナオ北部で漁業を生業としている3000世帯以上の人々を養う主要な漁場であるマカハラー湾のなかにある。この石炭火力発電計画による公害はこの保護地域へ確実に影響を及ぼすだろう。
(2)生態系   同事業の埠頭建設地の近くに暮らす漁民からは、埠頭の建設によってサンゴ礁が損害を被り、繊細な海洋生態系、沿岸生態系がさらなる損害を受けることになるという懸念がすでにあげられている。
4.社会環境  
(1)住民移転   強制して(事業推進派へと)吸収することは、農民を脅して、非常に乏しい(はっきり言ってゼロに近いほどの)移転迷惑料と小屋の援助といった最小限で不十分な移転パッケージを呑ませる主要な戦略だ。

影響を受ける住民は、まず第一に大した発言権を持っていない。彼らは、(マルコス時代の)戒厳令の政権下で、PHIVIDEC地域の第一級の農地約3000ヘクタールが工業指定地域へと強制的に転換させられた時代から、すでに開発という侵略の犠牲者なのだ。しかし、現在もそこは(この石炭火力発電所の建設予定地ですら)実際には、農地として使用されている。

農民は万が一でも彼らが反対派を支持するようなことがあれば、非自発的かつ強制的に追い出されることになると脅されている。
(2)生活・生計   事業者は断片的でわずかな生計支援プロジェクトしか提供しない。ところが、影響を受ける農民らは同地域を農地改革の対象地域としてカバーするなど、より持続可能な形での貧困削減のイニシアティブを提案している。一旦この石炭火力発電所が建設されてしまえば、影響を受けることになる住民の社会環境は悪化することは確実だ。
5.その他  
(3)モニタリング   適切なモニタリングの仕組みがない。
その他の問題点  
住民やNGOに対する配慮   協議のプロセスが偏っている。実際に、NGOやその他の市民社会は無視されてきた。強制移転させられることになる住民や同地域周辺に暮らしているその他の住民は説明を受けていない。彼らはもし反対派につくならば、PHIVIDEC地域から強制立ち退きさせると脅されている。

NGOと市民団体は、事業に激しく反対してきた。彼らは、事業が無理に押し通されないよう、より大きい抗議運動に発展させるため、地方や国家レベルでの政策意思決定者に対するロビーング、反対集会、他のかたちでの直接的な積極行動や計画を行なってきた。グリーンピースはこの反対活動への支持を示している。
 1990年代まで遡ったこの事業の発端の時期から、地元の住民やステークホルダーとの協議というものは一切ありませんでした。

 すべての計画は首都マニラで作られたものでした。協議はその結果論として開かれたものだけでした。それは事業者が環境適合証明書の申請手続きを進める際に行なわれただけのものでした。そして、私たちが何度も繰り返すように、協議の参加者は偏っており、そのプロセスは住民参加の態をなしておらず、その結果、彼らの調査は不十分で決定的なものではないのです。

他方で、事業者は政府内の支持者と手を組み、事業に必要な許可の取得を不透明なプロセスなかで進めてきました。私たちは、この非常に不人気で、論争を巻き起こしている事業を強引に推し進めるために事業者がこのようなやり方をしているのだと思っています。

再生可能エネルギー推進キャンペーン:フィリピンにおける石炭火力発電所への疑問

 同様な調査はフィリピン下院でも継続中です。下記の下院による調査は昨年、Alipio Cirilo Badelles議員によって提出された決議文に基づいているものです。

「RESOLUTION DIRECTING THE HOUSE OF REPRESENTATIVES COMMITTEE ON ENERGY TO CONDUCT A TOP PRIORITY AND FULL-SCALE INVESTIGATION TO DETERMINE THE APPROPRIATENESS OF THE COLLECTION OF THE PURCHASED POWER ADJUSTMENT (PPA) IN THE PROVINCE PALAWAN AND THE 200-MEGAWATT MINDANAO COAL-FIRED THERMAL POWER PLANT IN THE MUNICIPALITY OF TAGOLOAN, PROVINCE OF MISAMIS ORIENTAL (emphasis supplied).

 他方、持続可能な開発フィリピン評議会(PCSD)は現在、論争を呼び起こしているこの事業の調査をするよう求められています。PCSDはなかでも、持続可能な開発という原則、持続可能な開発に関連した国際協定、またフィリピンのアジェンダ21に、開発プロジェクトが適うよう確保することを課題として与えられている政府の特別機関です。

 持続可能な開発(フィリピン)評議会・市民社会カウンターパート(CSCCSD)はPCSDのメンバーですが、昨年12月に以下のような決議文を可決しました。

「Resolution calling on the Philippine Council for Sustainable Development (PCSD) to investigate the approval of the 210-mw Mindanao Coal-fired Thermal Power Plant in Villanueva, Misamis Oriental」

 フィリピン上下院において、フィリピン国内の既存の石炭火力発電所が引き起こしてきた環境被害に関する調査が継続されています。

 これらの調査の中には以下のものがあげられます。

「Senate Resolution # 129 - "RESOLUTION DIRECTING THE APPROPRIATE SENATE COMMITTEE TO CONDUCT AN INQUIRY, IN AID OF LEGISLATION, INTO THE ALLEGED HEALTH HAZARDS POSED BY TOXIC EMISSION OF COAL-FIRED PLANTS";Introduced by Sen. Robert Jaoworski]」

「Senate Resolution # 134 - "RESOLUTION URGING THE SENATE COMMITTEE ON ENVIRONMENT AND NATURAL RESOURCES; AND HEALTH AND DEMOGRAPHY TO INQUIRE, IN AID OF LEGISLATION, INTO THE POTENTIAL HAZARDS BROUGHT ABOUT BY COAL-FIRED POWER PLANTS AND THE HEALTH STATUS OF RESIDENTS OF COMMUNITIES WITHIN AND ADJOING THE CALACA COAL POWER PLANT WHO HAVE BEEN EXPOSED TO TOXIC CONTAMINATION FROM MERCURY IN THE PLANT'S WASTE STREAM"[Introduced by Sen. Loren Legarda-Leviste]」


 これらの調査は継続中のものです。

 再生可能エネルギーを支持する流れと一致して、既存の石炭火力発電所を閉鎖し、除去せよという要求は全国的に大きくなってきています。

事業の実効性に対する疑問と独立発電事業体(IPP)の問題

 政府内部のセクターから同事業に対して、幾つかの財政的、経済的問題があげられています。

 昨年2002年6月に、第10地方(ミンダナオ北部)の国家経済開発庁(NEDA)が行なった専門的な調査では、ミンダナオ石炭火力発電事業は「経済的に、財政的に実行不可能である」と結論付けられました。

 この種の事業に適用される政府の水準に基づき、NEDAの調査が出した結果は以下のようなものでした。

O 事業の正味現在価値はマイナスである。
O 事業の経済・財政上の内部収益率は、所定の基準以下である。
O というのも、もし事業が実行に移されれば、25年の契約期間の間に年間5億3,000万ペソもの補助金が必要となる可能性があるため。

 同事業はまた、政府から独立発電事業体(IPP)との契約を見直すよう調査を委託されたIPPレビュー委員会の行なった調査のなかでも、未解決の財政的問題を孕んでいるとされています。

 ミンダナオ石炭火力発電事業は、ラモス政権時に締結され、物議をかもし出している35個のIPPとの契約のうちの一つです。この問題に関する調査は上下院で現在も継続中です。

 以上のような結果にもかかわらず、同事業は必要とされている許認可を疑惑のなかで取得しました。したがって、以上で言及したような調査が現在も継続中なのです。

 ミンダナオ石炭火力発電事業に関する調査や石炭火力発電産業の全面的な調査を鑑み、私たちはJBICに事業者からの融資申請の手続きを進めるプロセスを一切延期するよう求めます。

 私たちはまた、JBICが同事業に関する現地調査の代表団を派遣し、私たちの問題を示すことができるように他者を交えない形での会合もしくは対話集会の機会を私たちともつよう要求します。

 この手紙で私たちは同事業に対する反対の意に揺るぎがないことを表します。というのも、この事業はこの州の人々の健康や、地元および地球規模での環境を確実に危険にさらすことになるからです。

 私たちは同様に、持続可能な開発を推進するものとして、再生可能エネルギー推進のイニシアティブをとる決意をここに表します。

[WE ARE LIKEWISE FURNISHING YOU A COPY OF THE CSCCSD RESOLUTION AND STATEMENT OF THE ARCHDIOCESE OF CAGAYAN DE ORO and SELECTED NEWS CLIPPINGS ON OUR CAMPAIGN]

草々

(SGD)
BenCyrus G. Ellorin
Co-convenor
People's CAMP
Spokesperson, Task Force Macajalar

(SGD)
Dacky Gandinao
Co-Convenor
People's CAMP
Misamis Oriental Farmer's Association

(SGD)
Atty. Manuel R. Ravanera
Legal Counsel, Task Force Macajalar

Cc:
- Friends of the Earth - Japan

-KfW
Prof. Dr. Werner Fassing
Palmengartenstr, 5-9
60325 Frankfurt/ M. - Germany
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