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プロジェクトの概要
1.カザフスタン:カシャガン油田開発事業とは?

カザフスタン共和国アティラウ沖のカスピ海、総面積5,576平方キロメートルの海域で、石油・天然ガスを採取する大規模油田開発事業。石油・天然ガスあわせた可算埋蔵量は、130億バレルで、過去30年間に発見された油田の中で最大の油田で、世界で五番目に大きい油田とされています。

2000年に発見され、2002年には既に商業発見宣言が行われました。さらに、2003年2月には開発計画が承認されています。2004年、商業生産に向けた開発計画が策定され、原油生産開始は2008年と見込まれています。


2.事業主体

事業主体は、日米欧中の合弁企業のAgip KCOで、生産分与協定の合意を受け、1997年に設立されました。日本からは国際石油開発株式会社(インペックス)北カスピ海石油(株)が1/12(8.33%)の権益を保有して参加しています。2005年8月現在、オペレーターは、イタリアの炭化水素公社(ENI)(参加権益比率18.52%)その他、エクソン・モービル社(18.52%)、ロイヤル・ダッチ・シェル(18.52%)、フランスのトータル社 (18.52%)、アメリカのConocoPhillips (9.26%)、KazMunayGas(8.33%)も参加しています。

3.日本の関わり
 日本企業:インペックス社(国際石油開発(株))が、事業主体であるAgip KCOに約1/12の資本参加。

 日本政府:2005年10月、JBICが、事業実施主体Agip KCOに出資をしているインペックスと649百万米ドルを
        限度額とした融資契約を締結

※同事業は、国際協力銀行が2003年に設けた「環境社会配慮ガイドライン」の完全適用となるため、ガイドラインの遵守が求められる。


4.事業の問題点

以下は、カシャガン油田開発事業に関して、現地NGO4団体が2005年4月12日にJBICへ提出した文書に示された事業の問題点の要点です。>現地NGOからの抗議文(PDF版)はこちらをご覧下さい。

@環境影響評価(EIA)
環境影響評価(EIA)では、事業による影響を適切に予測していない。チョウザメ (Caspian sturgeon), ベルーガ、シロクジラ(Hausen), セブルガ (Stellate sturgeon),北鮭 (Stenodus leucichthys)シップ・スタージョン (Acipenser nudiventris)等、非常に価値のある魚類やその餌場に与える影響 が適切に評価されていない。チョウザメの卵であるキャビアの値段や漁獲状況に関して、事業が引き起こすであろう経済的損失を適切に分析すべきである。北東カスピ海地域では、石油天然ガス開発等により既に漁獲高が著しく減少している一方、地域の住民はその主要な生計手段を漁業に依存している。多くの漁師は40才を超え、妻と平均で大体2人の子供を抱えており、漁業ができなくなった場合、新しい生計手段を見つけるのは不可能である。

A海底パイプライン
海底パイプライン建設は3年間にも及ぶが、建設による振動等、建設に伴う環境影響が懸念される。パイプライン建設現場の一帯は、季節によって移動する魚類の回遊ルートであり、また鳥類の巣もある等、カスピ海の中でも非常に脆弱な自然環境が存在する場所である。この懸念は、コンサルテーションでAgip KCOに伝えているが、これらの影響回避・緩和策がとられていない。

Bガス処理工場
カラバンに建設予定のガス処理プラントの緩衝地帯が半径5kmに設定されているが、その設定では周囲の自然環境や周辺住民の健康の安全を確保するには不十分であり、特に、プラントから12kmにあるカラバン集落の住民が近い将来移転しなくてはいけないことは明らかである。さらに、プラントの位置と地域の気象条件を鑑みると、その影響がプラントから約27kmに位置するアティラウ市へも及ぶことになり、ガス処理工場からの排出物によってアティラウ市の住民が移転しなければならなくなる可能性も高い。

ガス処理工場を、テンギス油田近くのZhylyiok地域に移すべきである。しかし、Agip KCOはカラバンに電気設備、道路、電車等インフラが既にあることを理由にこの提案を受け入れておらず、住民の健康や生活よりも商業的利益を優先させている。

Cガス圧入
ガスをオイル・レザバーに再度圧入することは、地球物理学者と環境専門家による非難を浴びている。EIAにおいて、ガス圧入の方法が与える影響に関する十分な評価がされていないし、Agip KCOは、この技術における環境面での安全性を保証していない。

D硫黄
地上での硫黄の保存が懸念される。Tengizchevroil(*)が開発しているテンギス油田(*2)では、既に600トンにもぼる硫黄の塊ができており、1年のうち200日以上に渡って強風が吹くアティラウ市周辺では、硫黄の粒子が拡散している。今後、カシャガン油田開発の新たな工場が出来ることにより、アティラウ市に撒き散らされる硫黄は更に増加することになる。アティラウからもっと離れたところに工場を建設するべきである。

Eガス精錬工場の産廃物処理場
EIAでは、Karabatan集落の近くにあるガス精錬プラントの廃棄物処理場に関する記述が無い。

FEIA作成時の不適切な情報公開とコンサルテーション
Agip KCOによるコンサルテーションは、コンサルテーションと認められない。EIA作成に向けてのコンサルテーションでは、EIAのドラフトは公開されず、また、コンサルテーションにおける環境社会影響への懸念に関するAgipによる回答は曖昧だった。

*1 TengizChevOil
TengizChevOilは、カザフスタン北東部に位置するテンギス油田とKorolev 油田を開発するため、1993年に設立されたChevronTexaco、ExxonMobil、Lukarcoとカザフスタン政府のジョイントベンチャー。

*2 テンギス油田
1979年に発見されたカザフスタン西部・カスピ海北東部沿岸地域に位置する陸上油田で可採埋蔵量 は60億から90億バレル。TengizChevOilが事業者。同事業による硫黄保存等の悪影響に関しては、現地でも大きな問題になった。

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