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資源開発と先住民族の権利 連続セミナーシリーズ 第1回報告
  「先住民族と資源開発」連続セミナー(第一回) 2007/06/07(木)
『先住民族の権利保護に関する国際的な動きとフィリピンの実情』


開催日:2007年6月7日

本セミナー第一回にはフィリピンの先住民族団体元代表であり、国際的な人権活動家であるジョアン・カーリングさんをお招きしました。以下はセミナーの内容の要約です。

連続セミナー終了後、講義録をまとめた報告集を発行する予定です。



フィリピンの先住民はフィリピン総人口8500万の内、1200万をも占めています。フィリピン政府は先住民族を先住民族権利法等でその存在や位置付けを定め、土地・資源に対する権利も表記していますが、依然として先住民族に対する国家の専制的圧力・搾取は実情として存在します。フィリピンの先住民族は、開発による強制移住や食糧の安全保障、文化の商品化、武装化、人権侵害、貧困など様々な問題にさらされています。

その中でも最近、特に深刻さを増しているのは、土地・資源開発問題です。先住民族にとって先祖代々暮らしてきた土地とその資源は、生活手段にとどまらず、文化や制度、意思決定方法の形成基盤、民族としてのアイデンティティの所在です。昨今激化する資源獲得競争を背景に、そのような先住民族の土地が次々に開発地へと変容しています。先住民族から土地・資源を剥奪することは、先住民族の伝統的生活スタイルを破壊し、飢餓、人権侵害、対立など様々な問題の根源となっています。

天然資源の全てに対する国家の統治権を認めるフィリピン政府は、開発の妨げになる先住民族の権利を認めないどころか、反政府的運動の中心人物の数多くが暗殺されるなど人権侵害を行っています。こうした政治的殺害の先住民の犠牲者は、2001年1月から2007年6月までの間に83人に及びます。さらに200人以上もが謎の失踪をしています。2007年には「人間の安全保障法(反テロ法)」が施行され、これはさらに人権状況悪化を招くと危惧しています。この法律によって、政府が疑いをかけたものは誰でも、十分な証拠もなく拘束することが可能になってしまいます。

また政府だけでなく、日本企業を含む開発事業主の多くも侵害の主体です。事業主企業は様々な手段で先住民族の開発の同意を得ようとしますが、多くの場合、その過程は公平性を欠いています。例えば、企業側は「長老」をでっち上げ賛成を得て、他の先住民の賛成なしにプロジェクトを進めます。多くの先住民族の村で政府による医療・教育などの基本的公共サービスが欠如していることから、それらを提供する見返りにプロジェクト賛成を求めます。有力者に賄賂を贈ることもあります。雇用条件の改善や助成金など好条件ばかりを提示し、環境汚染や農業や漁業への影響に関しての情報は伝えません。企業側が先住民族と協議していると言っても、その多くの例が先住民族の持続的繁栄に貢献しないプロジェクトにも関わらず、不公平な過程の中、また不十分な情報のもとで承認されているに過ぎないのです。

このような状況の改善に向けて、国際的な先住民族の権利を認める動きがあります。国連人権委員会で先住民族の権利に関する宣言が採択され、総会での採択への動きが高まっています。(2007年9月13日「先住民族の権利に関する国連宣言」総会採択)ここで宣言されている重要な概念はFree Prior Informed Consent、つまり「十分な情報に基づく事前の自発的同意」です。先住民族の理解可能な言語・様式で開発事業等の説明と協議が十分になされ、必要な場合にはプロジェクトの変更・停止が可能なだけ事前に、そして圧力や強制のない自由意志における決断ができなければいけないということです。先住民族が自らの将来を自由意志で決定する権利なくして、彼らの将来的な繁栄は実現できません。この原則を、政府のみならず企業や融資機関が採用・実践することを期待します。



6月7日の講演日は、ジョアンさんの活動仲間で、去年暗殺されたマコイさんの一周忌の前日だったそうです。献身的な活動家であるほど、生命が脅かされるのです。ジョアンさんに「身の危険を感じていますか?」と尋ねると、「いつも私自身が危険にあることは知っているけれど、正しいことをしているのだから胸を張って活動を続けていきます。」と笑顔で答えてくれました。逆境に逆境を重ね、それでも前向きなジョアンさんの見せる笑顔に多くの参加者が勇気付けられたのではないでしょうか。
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